■桐沢の生きがいになりうる大切なもの

 桐沢は、生徒たちと信頼関係を築いていたことによって、行方不明になっていた生徒・江戸川の居場所を特定することに成功した。救出の作戦として、折原の自宅に届けたピザを江戸川の軟禁場所に届け、ドアが開いた隙に逃亡を図るなんて仕業は、桐沢だからできたことだ。

 追いかけてきた半グレ気取りの男たちを拳で打ち負かし、ナイフを出した男には「本気か?」と確認して、ファイティングポーズを取った。足に力を入れ、両腕を上げてガードポジションをとると、これまで見たことのない桐沢がそこにいた。

 闘志に溢れて、隙が無くて、鋭さが全身から漂っている。ナイフを立てて突進してきたのをうまく避けつつ一撃でナイフを落とし、拳をボディーに打ち込むと鮮やかにダウンを取った。もちろん本気を出したわけではないだろう、「いざというときに、力づくでも自分の大事なものを守り抜くという武器」を見せたにすぎない。

 それは、3話で母親を守りたかった水野(山田杏奈/21)に強くなることの意味を伝えていたことに通じるし、4話で大切に思う気持ちを伝えたい伊庭(高橋海人/22)に、後悔させないようやらせたことにも繋がる。ボクシングで実績のある人間が、ボクシングの技術を使って相手を打ち負かすのはタブーだと分かっていても、江戸川を守れるなら後悔はないと思ったのだ。筋の通った生き方は桐沢らしくてカッコよかった。

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