■米兵と進学事情の非リアリティに違和感

『ちむどんどん』の第1週目、比嘉家の両親がサトウキビ畑で農作業をしているシーンで戦闘機の音がけたたましく鳴ったことを除けば、作中では米軍の存在感は希薄だ。

 沖縄県で暮らす人の生活圏に「米軍がいない」場合は確かにある。実際に、石垣島で生まれ育った40代の男性は、「自分の住んでいた場所では米軍を見たことはない。でも、近所に米軍の元居住区があったので、どこか痕跡は残っていた」と話す。基地がない沖縄本島の最南部で生まれ育った70代女性は「復帰のときは米兵はいなかった」と語っていた。

 しかし、暢子ら比嘉家が育ったやんばる地方、沖縄本島北部には1957年10月から北部訓練場、沖縄にある米軍の軍事演習地で最大面積の35.33平方キロメートルを占める米海軍の施設が存在している。

「暢子らが暮らすやんばる村は架空の土地。比嘉家の周辺は自然豊かでのどかな地域と描写されていたので、家の近辺に米兵がいないという可能性はあるでしょう。ただ、作中でたびたび登場する沖縄北部の都市・名護のハンバーガーショップに1人も米兵がいないというのは、さすがに違和感があります」(テレビ誌ライター)

 借金苦にあえぎながらも4兄妹は高校へ進学、兄の賢秀は中退するが、良子、暢子と歌子はしっかり高校に通っているし、良子は奨学金を借りて短大に進み教師になった。

「比嘉家は、第2週目で暢子を東京の親戚のところへやって、食い扶持を減らさなければならないほど困窮していた、というエピソードがありましたよね。それほどの貧困ぶりでは、中学を出てからすぐ働かなければ、となるのが自然ではないかと思います。そのへんの説明もうまくされていないので、気にはなりますよね……」(前同)

 こうした『ちむどんどん』作中の進学について、沖縄県人はどう思ったのだろうか。

「今までの朝ドラでも、子どもを一人手放さないといけない事態に陥るような貧困家庭から高校に通う話については疑問でした。自分の祖父母らで高校を出ているのは1人だけです。80代なので、賢秀たちより年上ではあるんですが……」(前出の沖縄県出身の20代男性)

 前出の70代女性は、きょうだいを養うために中学校にも満足に通えなかったという。

「ドラマを見ていて、“これは違うよな”……という気になる部分が多いと、作品に入り込めなくなります。そうなると、ますますアラが目立ってきてしまう。『ちむどんどん』はそうした負のスパイラルに陥ってしまってるのかもしれませんね。特に、沖縄出身の方が“ノレない”と思ってしまうのは大いに問題ではないでしょうか」(前出の専門誌記者)

 ウチナーンチュがいまいちノれない『ちむどんどん』。超違和感を生み出している「ドラマと現実のズレ」は、これから修正されるのだろうか――。

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