■「アサシン善児」これまでの暗殺リスト

 善児はその後も第5回では片岡愛之助(50)演じる義時の兄である北条宗時、米本学仁(43)演じる工藤茂光をまとめて殺害。

 また、夫ながら八重姫の殺害を命じられていた芹澤興人(41)演じる江間次郎がどうせ八重を殺せないと見越して待ち伏せし殺害。

 しかも第11回で仕えていた伊東家が離散して中村獅童(49)演じる梶原景時に拾われた結果、元々仕えていた伊東祐親と伊東祐清(竹財輝之助)を表向きに「自害」として暗殺。

「自分で手を下すだけでなく、第15回で殺された佐藤浩市(61)演じる上総広常の場合、直接の死因は“景時に刀で滅多切りにされた”ことですが、事前に善児が広常の刀を盗み無力化していた、というサポートもこなしていました。

 また、第20回では藤原頼衡(川並淳一)と静御前が産んだ義経の男子も暗殺しています」

 そして、多くの視聴者を戦慄させたのが第24回。迫田孝也(45)演じる源範頼と農作業にあたっていた夫婦を殺害したのだが、この場面の描写が、

「“次は何を植えようか?”と範頼が振り返ると音もなく夫婦が殺されていて悲壮感のある音楽が流れ始め、“まくわうりなんかがいいなぁ”という背後からの声に振り向くと、ピンボケしている善児が映り、カメラのピントが合った瞬間に淡々と範頼の腹を刺す」

 というもの。

 脚本家の三谷は朝日新聞連載コラム『三谷幸喜のありふれた生活』にて「最近では、殺し方にバリエーションをつけようと、登場シーンの演出がやたら凝るようになった。監督陣もノリノリなのだ」とつづっていたが、まさにその通りの演出だった。

 ちなみに、第24回の時点で善児が手にかけたのは、広常も含めて12人にも及ぶ。

「『ありふれた生活』によれば、史実であまりに多くの人物が殺されていることから“毎回同じ人物が手を下すというのはどうか”とひらめき、時代考証の先生方の意見を取り入れたうえで善児が生まれたといいます。そして、これを前から“殺し屋をやってほしい”と考えていた、三谷作品常連の梶原さんにやらせたそうです。

 ちなみに、三谷さんは事前に演者を想定した“あて書き”でしか脚本を書かず、他者による劇の上演を許可しないことで有名です」

 同コラムでは、

「(善児は)その名の示す通り、最初から梶原善を想定しての当て書き(※先に役者を決めてキャラを作ること)。普段は陽気なムードメーカーや、ちょっとこざかしい小市民を得意とする彼だが、僕は殺し屋をやってほしいとずっと思っていた」

 とつづられている。

ゴルゴ13』以来の人気者になった殺し屋かもしれない、と自画自賛していたが実際にそう思えるのも無理はない存在感を放っているため、視聴者も同意見に違いないだろう。

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