■「いい時だけ信じて、悪い時はなかったことに。それがやっぱり一番精神衛生上いいかもしれない」

 たとえば、「弱点は?」という質問に「ありすぎて応えるのが難しいですけど、決断力がない」「優柔不断で時間もいっぱい、けっこう考えて迷ってしまうことが多い」と意外な回答をして芦田を驚かせていた。

 また、「占いは信じますか?」という質問については、普段そもそも占いをすることが少ないと前置きしてから、神社でおみくじなどを引いた場合「大吉だったらそれを信じて、凶だったら引かなかったことにするかもしれない」「いい時だけ信じて、悪い時はなかったことに。それがやっぱり一番精神衛生上いいかもしれない」としていた。

「勝負師といえばジンクスを気にするもので、実際に藤井五冠も対局について“勝率のいい扇子がある”“初手を指す前に必ずお茶を一口飲むようにしてる”というのを21年3月に同じく『伊右衛門』の対談企画で話しています。そうしたことを気にする人の中には、一歩間違えると“霊感商法”のようなものに足を突っ込みかねない可能性もありますが、今回の話を聞く限り問題なさそうですね。

 ちなみに、芦田さんと同じく“無人島に持っていくもの”という質問がありましたが、これには“詰将棋やチェス・プロブレム(チェス版詰将棋)の本”と答えており、さすがという感じです」(前出の専門誌記者)

 また、「子供の頃から変わらないところは?」という質問について、

「負けず嫌いなところは、変わらないのかなと思います。昔は将棋以外のゲーム、例えばトランプであっても負けたらすごく悔しがって、泣いてしまうようなこともあるくらいだったので」

 と回答。「今では、ある程度コントロールできるようになってきたんですけど」ということで泣くことはなくなったが、「負けず嫌いという本質は昔から変わっていないのかなという気がします」ということだった。

 ちなみに藤井五冠については、谷川浩司十七世名人(60)とこんなエピソードがある。

《古屋市の将棋イベントで多面指しの指導将棋をした際、飛車と角を落とす2枚落ちのハンデ戦で対局した小学2年生の藤井少年に大泣きされたことがある。

 私のほうが優勢の局面だったが、「引き分けということにしようか」と提案した瞬間、負けを察していた藤井少年は将棋盤に覆いかぶさり、火がついたように泣き始めた。その時は近くにいた師匠の杉本さんにフォローしてもらった》(21年5月24日の『現代ビジネス』より谷川名人)

《局面としてははっきり負けだったので。そこを谷川先生が引き分けを提案してくださって。でも自分でもはっきり負けとわかっていたことなので、やっぱり……》(同コラムより藤井五冠)

「“泣く”ことが、敗北から気持ちを切り替えるためのメンタルリセットだったのではにか、という考察をするメディアもありました。

 実際、藤井五冠は数多くの記録を打ち立てた一方で、今年の第70期王座戦挑戦者決定トーナメントで大橋貴洸六段(29)に負けたり、無敗ではない。藤井五冠の強みは、将棋の強さというより切り替えの強さかもしれません。今回の対談でも“タイムマシンで行きたいのは?”という質問に“未来”それも”200年後”と答えていて、過去は振り返らないタイプなのが察せられます」(前同)

 SNSでは今回の対談について、

《ふたりの落ち着いた雰囲気質問に対してしっかりとした受け答えは新成人茶会にぴったりなキャスティングですね。》《藤井さんも芦田さんも昔から芯がしっかりしている印象があります。将棋界、芸能界を引っぱっていってほしいなと思っています。》《おふたりの対談

穏やかで優しい雰囲気に包まれていますね》

 と、好意的な声であふれていた。

 20歳の藤井五冠と18歳の芦田。どちらも、今後の業界を引っ張ってほしいー-。

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