■自営業や社長ファンが多い理由

 では、矢沢のファンはどんな人々か? 20代から60代の熱心な矢沢ファンを取材した、浅野氏が語る。

「『成りあがり』に影響を受けた古くからのファンは、自営業や社長がとても多い。そうした人はお金の苦労を知ってますから、永ちゃんが35億円の借金を完済した話に“勇気をもらった”と話していましたね。絶望から這い上がった生きざまを見て“惚れ直した”というファンが多く、この事件によって、永ちゃんの男の株はさらに上がったと言えますね」

 また浅野氏は、取材した屋台店主の男性から、こんな伝説を聞いている。

「94年のクリスマスイブの夜、おでんの屋台を営業していたところ、突然、矢沢が客としてやって来たとか。泥酔した女性客が“あんた、永ちゃんに似てるわね”と絡むも、矢沢は“よく言われるんですよね”と笑顔。一般客に交じって、酒と会話を楽しんでいったそうです。最後は“マスター、ガード下で飲むの最高!”と言って去っていったといいます」

 さらに翌日、矢沢が乗った高級車が屋台前に現れ、「よッ」という感じで手を振ったというのだ。

「屋台の店主は、矢沢ファンではなく、むしろ若い頃の不良のイメージから嫌っていたそうです。それが間近で見る永ちゃんのかっこよさに魅了され、大ファンになったとか。それにしても、クリスマスの夜にガード下の屋台で飲むなんて、粋ですよね」(前同)

■酒がらみの伝説も数知れず

 大の酒好きとして知られる矢沢は、酒がらみの伝説も数知れず。中でも哀川翔(61)が語ったエピソードが強烈だ。

「哀川がバーで飲んでいると、たまたま永ちゃんがやって来た。哀川があいさつをして握手したところ、矢沢が手を放さない。無言で見つめ合ったといいます。20分後、ようやく手を放すと矢沢はにっこり笑って、“哀川翔、最高!”と叫んだとか」(前出の芸能記者)

 2人はその後、へべれけになるまで飲み明かし、哀川は本人の前で矢沢の歌を熱唱したそうだ。

「ちなみに哀川は、“今まで会った人の中で一番怖かった”と回想しています」(前同)

 日本の音楽シーンの偉大な足跡から、酒場の酔いどれ伝説まで……デビューから半世紀を駆け抜けてきた我らが永ちゃん。

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