■なにもしない和彦・宮沢氷魚

 それらは「地元の野菜やなんかを使った食堂にわざわざ地元の人がたべにいくのか、ってのはおいといて。メニューなんかは和彦が写真撮ってそれ使いなよ なんのためのカメラだね、それは」や「和彦の仕事『冷ます』」というもの。要するに和彦が動いていない、という指摘である。確かに目立ったセリフは「なんともいえない香り。クセになるかも」のみだった。

 確かに沖縄に移住してきてからの和彦は、ヒロインの夫であるのに影が薄い。しかし、よく考えてみると、以前から和彦が重要な動きをすることは、少なかった。特に暢子に対して意見を言ったり働きかけることで物語が動いた、ということがほぼなかった。

 たとえば愛(飯豊まりえ/24)という恋人がいながら、暢子に気持ちがいっていたとき。愛から結婚の意思を確認されても、はっきりと答えることはなかった。結局、態度をはっきりさせないまま、愛は別れを決意し、パリに旅立ってしまう。暢子とつきあうようになったのも、愛が後押しした形だったのだ。

 暢子が沖縄料理店のちむどんどんを開店したときも、和彦が手伝ったのは、主に試食。客足が落ちたときに、暢子をたしなめて休業をすすめたのが、唯一、夫らしいことだったか。さらに沖縄に移住してからは、登場人物が増えたこともあって、さらに影が薄くなっていった。沖縄のことを書きたいのに書かせてもらえないと愚痴っていたが、具体的になにか取材しているシーンは皆無。黙々と暢子の手伝いをしていたのみだ。

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