■「合わせなくても、子どもはしっかり見ているもんなんです」

―ー連れ去りの場面なども、けっこうハードでしたか?

「かなりハードですね。『スピルバン』(※)って作品があるんですけど、スピルバンはクリン星って惑星があって。ここに敵がやってきて滅ぼされるんです。

(※『時空戦士スピルバン』:1986年放送の特撮ヒーロー作品)

 宇宙船で逃げるんですけど、どこの星に逃げればいいか分からない。宇宙をさまようなか、2か月くらいして、残りの食料も水もわずかになって。“この中で1人だけくじ引きで決めて、そいつだけ生き残らせよう!”となり、“ちょっと待ってください。子どもなら食料2人分いけます!”ってなって。

 それが主人公のスピルバンと、一緒に活躍するお姉ちゃん的な存在のダイアナなんです。

 母船から小さい宇宙船で地球まで避難するんですけど、出て行ったときに元の船が自爆するんですよ……」

――うわぁ……。

「爆発した船にお母さんとかもいるわけなんですが……星が攻め込まれる前にも父ちゃんと姉ちゃんが拉致されて、怪人に改造されたりもするのが、本当に悲しいんですよ。

 で、避難して十数年寝っぱなしで、身体も大きくなりました、地球着きました、となり、今度は地球に敵が攻めてきます。“さぁ戦いましょうか”ってなったときに“あれ見たことあるな?”ってなって、それが自分の父ちゃんや姉ちゃんだったんです。いやー、すごく悲しいですよ」

ときおり真剣な表情にも

――いまだにそれが焼き付いている?

「焼き付いていますね~。そのときは、戦隊では『超新星フラッシュマン』(1986年)がやっていたんですけど、それも拉致されるんですよ。宇宙人が子どもを拉致して奴隷にしようとするんですが、そこでフラッシュ星の善玉の宇宙人に育てられて、宇宙で育って20年後に地球に帰ってくる。子ども心に、めちゃくちゃ悲しかったですね」

――そういうのを子どもの頃に観るのも大切なことなんでしょうね。

「子どもが分かるレベルに合わせるのは当然だし、子ども向けの作品として出すのはもちろん大事だと思うけど、合わせなくても、子どもはしっかり見ているもんなんです」

――令和になってから全体的に特撮は雰囲気が変わった感じがあると言われますが、どう感じていますか?

「令和というより、やはりがコロナがいちばん大きかったと思います。コロナで撮影が中止になって、4,5回総集編が続く異常事態になって、東映のスタッフさんも“こういうことにならないよう体制を整えないとダメだよね”となったようで、緊急事態宣言が出ても撮影を止めない方法を無茶苦茶考えて。そのなかでロケをしないとか、スタジオで少人数だけでも大人数に見えるような合成技術を『仮面ライダーセイバー』(2020年9月~2021年8月)ごろから考えられてきて。その技術が違和感なく馴染んできたのがここ最近の感じですかね」

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