■平野紫耀の活躍をもっとずっと見たい

 平野は、出演した作品はすべて主演という特別な人だ。俳優が専業ではないこともあり、出演作品数は同世代の俳優に比べると少ないが、どの役も魅力的に演じてきた。特にギャップを演じるのが上手で、御曹司なのに自分に自信が持てず陰で努力を重ねているとか、日本有数の名門校の生徒会長なのに貧乏な家庭の苦労人といった、真逆の要素を併せ持った人物が多かった。

 今作では、詐欺師なのに悲しみを抱えたダークヒーローを演じた。心に闇を抱えていても、信念を持ってブレずに生きている黒崎を演じたことは、平野にとっても大きな出会いになっただろう。番組スタート前に放送された情報バラエティ番組の番宣で、当作品のいち押しポイントを聞かれた平野は「人間関係(フリップには“にんげんかんけい”と平仮名で書いていた)」だと言っていたが、まさにそのとおりのドラマだった。

 黒崎という人物の本質を見抜き、心で感じたままを芝居に乗せる。それは、感受性が高く、演じる人物を感じる素直な心があるから表現できることだ。そして、平野がそうするなら黒崎もそうだろうと思わせる説得力は、監督からの信頼がなければできない。20代前半の集大成となった『クロサギ』は、平野の代表作のひとつとして残っていくだろう。

 黒崎の旅が続くように、平野の旅も続く。黒崎のように、信念を持って生きていれば、チャンスは必ず巡ってくるし、それを支援する人が出てくるだろう。なにより、平野が存在してくれることに喜び、全肯定で応援する人たちがたくさんいる。エンターテインメントの世界で、平野の活躍を熱望している人たちを、これからもずっと幸せにしてほしい。(文・青石 爽)

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