■前沢牛と酢飯はベストマッチング
そしてトップ10で唯一、肉系寿司の、前沢牛のにぎり(岩手県)が第4位に。
「肉の寿司が広まったのは回転寿司の普及後でしょうが、実は明治時代の正統派と言える寿司の本に、着想として紹介されています」(日々野氏)
寿司ネタは、魚のみならず。品のいい甘みがある前沢牛と酢飯は、ベストマッチングなのだ。
■青森といえば“大間のマグロ”
栄えある第3位に輝いたのは、寿司の王様と言えるマグロのにぎり(青森県)だ。青森といえば“大間のマグロ”だろう。
「実は大間町内では、通年で地元の本マグロを出している店は、ごくわずか。大間のマグロを食べるなら、八戸市の『八食センター』がオススメです。地元の海鮮物が集まる観光市場で、他にも焼きウニや、冬の味覚の寒ビラメなど、郷土色豊かなネタもあって楽しいです」(前出の米川氏)
同センターの中には、回転寿司店も。リーズナブルな値段で味わえるのだ。
■寿司職人の腕はアナゴと玉子焼きで分かる
続いて握り寿司を中心としたスタイルの江戸前寿司(東京都)が第2位に。
「関西から広まり、江戸にも伝わった箱寿司は、作った翌日に食べるものでした。しかし、江戸っ子は気が短いのか、すぐに食べたかった。こうして、江戸前寿司が生まれたといわれています」(日比野氏)
江戸では、現在の東京湾で獲れた魚介類を新鮮なまま食べることができたが、生での保存は困難だった。
「そこで、材料が腐らないように、焼いたり、煮たり、締めたりと、下仕事がはやったわけです」(前同)
その下仕事の繊細さも江戸前寿司の魅力となり、「寿司職人の腕はアナゴと玉子焼きで分かる」とまで言われるようになった。
とはいえ、江戸前寿司が今のような形になったのは、戦後に電気冷蔵庫が普及してからだ。
「全国から集まる魚介類を、いつでも生で食べられるようになったのは大革命でした。なお、江戸前寿司に欠かせない厚焼き玉子が一般化したのも、鶏卵の供給が安定した戦後です」(同)