■影響を色濃く感じるペドロ・マルティネス
「松井以上に影響を色濃く感じるのは、むしろマルティネスのほうかな。スター選手にしては小柄で、下半身の使い方がうまい。非パワー系な投球スタイルも含め、日本人がマネしやすい投手ではあるからね。
そこまで似ているわけではないけど、意図してリリースポイントを下げた今年の大谷には、今まで以上にペドロっぽさを感じたよ」(前同)
ちなみに、そう語る愛甲氏も、投手としてプロ入り。野手に転向した後も、実戦でのブルペン入りを何度も経験するなど、“元祖二刀流”になりえた才能の持ち主だった。
■“モノが違う”ダルビッシュ有
そんな愛甲氏が、大谷と並んで「モノが違う」と評するのが、WBCでの共闘も記憶に新しいダルビッシュ有(37)、その人だ。
「2人の共通点は、日本人離れした自身の体格を熟知したうえで自分の形を作り上げていること。
今は、弾道測定分析機器とかで、あらゆる解析データが手に入るけど、受け取る側に個人差がある以上、AIが弾き出した理想を、ただ追い求めても、一流にはなれっこない」
この点にこそ、2人のすごみがあるという。
「もともとの総合力が高いうえに、そのことを頭でも筋肉でも、ちゃんと理解しているのがダルビッシュであり、大谷。それが彼らの再現性の高いパフォーマンスにもつながっているんじゃないかな」(前同)
ダルビッシュと言えば、『変化球バイブル』(ベースボール・マガジン社)と題した自著で、その握りをすべて公開するなど、昭和の価値観では到底、考えられない発想でも有名だ。
もちろん、『変化球バイブル』の読者が握りをマネしても、プロ野球選手になれるわけではない。
「ああいう本を出せるのも、“他人が理屈を分かったところで、俺のマネはできない”っていう、絶対的な自信がなせるワザだろうね。
俺の師であるオチ(落合博満)さんも“俺のマネは絶対にするな”って、よく言っていたけど、神主打法が理に適っているのも、あくまで、あの人にとってのこと。それは王(貞治)さんの一本打法も同じだね」(同)
ただ、大谷とダルビッシュの関係性は、他の師匠たちとは少し違うようだ。
「まぁ、あの2人に関しては、師弟ってよりは感化し合える“同志”ってほうが正確だとは思う」(同)