中国の"決戦兵器"は潜水艦!!

さらに、ここにきて安倍政権は、豪州(オーストラリア)との連携を急速に進め始めた。
それが、「海自潜水艦技術の移転」である。

「豪州の新型潜水艦設計に日本が技術協力することが決まったんです。日本は2009年に1番艦が就役した『そうりゅう』型潜水艦の先進技術を、豪州に提供することになります」(防衛省関係者)

「そうりゅう」型潜水艦は、動力源が原子力でない通常動力型潜水艦としては、"世界最強"とされる海自の秘蔵艦。その最大の特徴は、動力源をこれまでのディーゼル・エンジンから改良したところ。

「『そうりゅう』型は、燃焼に酸素を必要とするディーゼル・エンジンに、"スターリング機関"を合体させた動力システムを搭載しています。スターリング機関は燃焼に酸素を必要としません。ディーゼルの場合は、定期的に水面近くに艦を浮上させ、シュノーケル(吸気管)を伸ばして大気を取り込む必要があります。その間、潜水艦は無防備になってしまうわけです。それが一部動力にスターリング機関を採用したことで、大気補給の回数が大きく減り、水中での航続距離も伸びたわけです。これは、潜水艦の"弱点"を補う画期的な技術なんですよ」(軍事ライター・黒鉦(くろがね)英夫氏)

日本と同じく四方を海に囲まれた豪州は、海軍力の整備が国家課題。
「通常、潜水艦の技術は軍事分野の中でも"秘中の秘"たる部分です。それは、自民党の石破茂幹事長が特定秘密保護法の議論の際に、"たとえば潜水艦に関する情報など……"と、真っ先に例にあげていたことでもわかります。それを惜しまずに提供するのは、よほどの信頼関係がなければ難しい。これは、米軍を核に、自衛隊、豪州軍が緊密に連携していくという決意の表れです」(前同)

日米豪の3か国が共通の仮想敵とする国――それは中国にほかならない。

日豪の技術協力が報じられるや、中国国営の『中国新聞網』は、軍事専門家の話として、
「わが国の安全に対する大きな脅威」
と断じてみせた。

「中国にとっては、実に"不愉快"な話でしょうね。海軍を強化し、海洋権益の拡大を公言してはばからない中国にとって、目の上のタンコブになるのは自衛隊と米軍です。そこに、豪州まで加わるとなるわけですから、心中穏やかではない。日豪技術協力の噂は昨年から出ていましたが、このたび、それが正式に発表された。ある人民解放軍の幹部は、"(噂は)本当だったのか……"と絶句していたと言いますからね」(同)

日米に追いつけ追い越せとばかりに、装備の近代化に血道をあげる中国海軍。
近年は空母を就役させたり、"チャイニーズ・イージス"の異名を取る旅洋Ⅱ型駆逐艦を運用するなど、その陣容は近代海軍そのもの。

「ただし、まだまだ日米の海軍力には10年以上遅れています。多くの艦艇が、その実は"どんがら"。どんがらとは、外見は立派でも中身はスカスカという意味です。水上艦艇同士の戦いでは、正直言って日米の相手にはならないでしょう」(専門誌記者)

そこで中国は、「潜水艦戦力の拡充」に活路を求めているのだという。

「中国が尖閣上空を含む空域に防空識別圏を設定してみせたのも、"鉄クズ"と揶揄(やゆ)された空母を就役させてみせたのも、すべて潜水艦部隊を守るためです。水上艦艇では日米に敵(かな)わない中国は、潜水艦を"決戦兵器"と考えています。その虎の子の潜水艦を守るためには、空と海上をわがものとしなければなりません。尖閣周辺で、領空、領海侵犯が頻発していますが、その下には、必ず潜水艦が潜んでいると考えて間違いありません」(前出・黒鉦氏)

中国海軍は、原子力潜水艦(原潜)と通常動力型潜水艦の2種類の潜水艦を70隻近く保有している。ただし、なかには旧式で使い物にならない明(ミン)型などが多く含まれているとされ、
「近代艦と呼べるのは、半数程度」(前出・防衛省関係者)
というのが実情とか。

対して、海自の保有する潜水艦総数は17隻(練習艦を除く)。
防衛省は21年までに総席数を22隻(+練習艦2隻)に増強する方針だが、それでも中国の半数にも満たない。

「中国は現状、数にものを言わせた"飽和攻撃"ができる点が有利です」(軍事評論家・古是(ふるぜ)三春氏)

ここでも質より量というわけだ。

わが国が警戒するべき"質"を備えた中国の潜水艦は、
「ロシアから購入したキロ型と、これまたロシアの技術を利用した商(シャン)型(原潜)くらい」(前出・専門誌記者)だという。

潜水艦部隊に勤務していた元自衛官が明かす。
「潜水艦に関する情報を公開すると、その能力が判明してしまうことが多い。なので、公に報じられることは滅多にありません。その実は、中国海軍の潜水艦はしばしば日本領海を侵犯していますよ。尖閣周辺はもちろん、南沙諸島、房総沖の日本海溝周辺にも頻繁に出没しています」


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