いつ何が起きてもおかしくない昨今の日本列島で、天災から命や財産を防衛するべくまずは周囲の災害危険地域を調べるべし!

8月20日に発生し、死者72名(8月28日現在)に及ぶ大惨事となった広島市の土砂災害。

土石流の速度が瞬間的に144キロに達していた可能性が指摘されるなど、その凄まじさが明らかになってきている。

「実際、死因が特定できた死者のうち、最も多かったのが窒息死でした。住民らは逃げる間もなく、土砂に飲み込まれてしまったんです」(全国紙社会部記者)

この恐怖の瞬間は、240ミリという歴史的な豪雨がもたらしたのだが、これは広島だけの話ではない。日本全国で集中豪雨などが猛威を振るう異常気象に加えて、いよいよ9月は台風のシーズン。よりリスクが増す季節が到来するのだ。

「台風や異常気象によってもたらされるのは、土砂災害ばかりではありません。河川の氾濫による洪水のほか、都市部では排水用の水路から水が溢れ出し、町中が水浸しになる被害も予想されます」(前同)

まちづくり計画研究所代表で、防災・危機管理ジャーナリストの渡辺実氏は、「広島の災害は、もはや、気象庁が避難勧告や警告を出してからでは間に合わない現実を露呈しました。それでは、どうやって身を守ればいいのか。まず第一に、住んでいる地域のリスクを事前に把握しておくことが大切です」

襲い来る異常気象を前に、チェックしておく必要があるという。そこで本誌が危険箇所を徹底取材すると、意外と知られていない場所がいくつも見つかった。

その前に知っておきたいのが、豪雨や台風が土石流や地すべり・がけ崩れといった土砂災害が起こすメカニズムだ。砂防地すべり技術センターによると、「山の土は粒子間の摩擦や粘りがあり、ある程度までなら水分を吸収することはできます。しかし、歴史的な雨量によって、その吸収力が飽和状態に達すると、土の粘りが効かず、土砂災害へと繋がってしまいます。つまり、急傾斜地なら、全国どこでも土砂災害が起きる可能性があるんです」

その「急傾斜地」とは、「傾斜角度が30度以上で5メートル以上の高さの崖」とされ、全国で約33万か所が「急傾斜地崩壊危険箇所」に指定されている。

都道府県別にその数を見ると、最も多く抱えるのは今回、大惨事となった広島(約2万1900か所)。次いで、山口(約1万4400カ所)、大分(約1万4200か所)、島根(約1万3900か所)、兵庫(約1万3500か所)、高知(約1万3000か所)の順になっており、意外にも西日本に集中している。

では、東日本は安全なのかというと、そうではない。山が少なく、見渡すばかり平野の関東でも、意外に急傾斜地が多く、神奈川では7100か所に及ぶ。

そして意外や意外にも、ビルや住宅が立ち並ぶ東京23区内にも危険箇所は多く隠れているという。

「なかでも港区は急傾斜地崩壊危険箇所が集中した場所で、都内の危険箇所の2割がここにあります。しかも、六本木、赤坂、高輪、白金など意外にも"お高い街"に危険箇所が集まっています」(前出・社会部記者)

また、砂防地すべり技術センターは「もともと川だった場所で、当時の川端が崖になっている所に注意が必要」と警鐘を鳴らす。

また、崖だけでなく「軟弱地盤」地域にも注意が必要。そもそもの土地自体の強度が弱ければ、当然、土砂災害が起こりやすくなる。広島の土砂災害地域も、花崗岩が風化してできる脆弱な地質(まさ土と言う)だったとされている。

「もともと、沼や川だった低地で水が入り込みやすく、軟弱な地盤では、土砂が流出する危険があります。その最たる例が泥炭地層。植物が腐った土質であり、土というより限りなく水に近い性質です」(液状化対策軟弱地盤対策推進協議会)

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