地震の揺れが増幅される地域

この軟弱地盤を抱える地域では、豪雨被害のみならず、地震被害も大きくなる。

揺れによって地盤がドロドロになってしまう液状化や、震源が遠くであっても予想以上に揺れが増幅されて建物が損壊するなど、"重大警戒地域"なのだ。

実際、2003年に発生した十勝沖地震では、震源地から約260キロも離れた札幌市の住宅街で、住宅が沈むほどの液状化被害をもたらした。

北日本では、泥炭地層を抱える北海道石狩平野や、北上川沿いに軟弱地盤を抱える仙台平野が挙げられる。しかも、この2地域は札幌、仙台という日本有数の大都市を抱えている。

また、火山灰が堆積してできた地域も地盤がもろく、首都圏はその関東ローム層で構成されている。名古屋がある濃尾平野も地盤が軟弱地盤。このほか、湖面を埋め立てた浜名湖周辺や伊勢湾岸沿いでは、過去に多数の液状化現象が確認されている。

関西では琵琶湖周辺に広がる平野部が危険だ。厚さ5~10メートルの腐植土などの柔らかい地層で覆われ、特に姉川が琵琶湖に注ぐ河口付近(長浜市)は、その腐植土層が約20メートルの厚さに及んでいるという。

「琵琶湖周辺を襲った地震では、液状化に伴う大規模な地滑りが発生し、湖岸の集落が琵琶湖に水没した例が現在の長浜市や高島市などでいくつも確認済みです。阪神大震災でも近江盆地で液状化が発生しましたので、県外に震源がある地震であっても注意が必要です」(滋賀県の防災関係者)

中国ブロックではやはり、土砂災害を招いた広島は、その中心部が脆弱な三角州上に形成され、「戦国武将の毛利輝元が広島城を築城する際に苦労した」(歴史研究家)と言われるほどだ。

では、自分が住んでいる地域が危険だとわかったら、どうしたらいいのか。まず、近くに崖や傾斜地がある場合、「雨が降ったあと、崖の割れ目から"土色の水"が染み出していないかどうか注意深く観察してください。それが長時間、止まらずに出てくるようなら、避難の準備が必要となります」(前出・砂防地すべり技術センター)

また、広島の土砂災害での被災者の「体験」も教訓になりそうだ。

「土砂災害が起きる直前、"山がドスンドスンと音を立てていた" "土の匂いが普通ではなかった"などという、いつもと違う予兆を察知し、2階などへ逃げ込んで助かった住民もいたんです」(前出・渡辺氏)

一方、この夏、集中豪雨によって、都市部でも浸水の被害に見舞われたが、台風シーズンを控えて、注意すべきは河川の氾濫だ。

国内でも河川水害被害がトップクラスといわれる庄内川の下流地域(名古屋市)では、00年の東海豪雨で家屋への浸水は約6万2000世帯に及んだ。日本3大都市のひとつの市街地が水没する事態は、意外さを通り越したものだった。

同じく、予想外の惨事になりかねないのが、JR大阪駅付近。淀川流域の大阪市は、そもそも海面や水面より低い土地が広がる危険地帯。淀川が決壊した場合、JR大阪駅前には1~2時間で洪水が押し寄せ、最大で2・9メートルの浸水が起きるというデータもある。

このほか、今夏の台風11号の影響で避難判断水位を越えた吉野川(徳島県)、定期的に氾濫を繰り返す筑後川(福岡県)など、危険を抱える河川は多い。

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