患者の数はなんと、静岡県の人口より多いこの疾病。決定的な治療法がないなら、自分で防ぐしか手はない!

「日本は世界に先駆けて、未曾有の超高齢化社会に突入しました。2012年に厚労省が行った調査では、国内の65歳以上の高齢者のうち、15%にあたる約462万人が、認知症に罹患しているんです。この数字は今後、ますます増えるでしょう」(医療ジャーナリスト)

今や国民病となりつつある認知症。だが、この認知症について、正しい知識を持つ人は意外と少ないようだ。東京医科大学の羽生春夫教授が解説する。「そもそも"認知症"というのは、病名というよりむしろ、頭痛や腹痛と同じく症状の総称。認知症の症状が出る病気には、いくつかの種類があるんです。最も多いのは"アルツハイマー病"で、認知症全体の50~60%を占めます。次に多いのは、脳卒中の後遺症の"脳血管性認知症"と、幻視やパーキンソン病の症状を伴う"レビー小体型認知症"で、それぞれ約15%を占めています」

種類がいくつかあれば、原因もそれぞれ異なるわけだが、最近になって、「糖尿病から認知症になる」リスクが指摘されているという。

ちなみに羽生教授が大学病院で勧めるのは、一人でいくつもの病気を抱えることの多い高齢者の健康状態を、総合的に診療している「高齢診療科」。

子どもの病気をほとんど受け持つ小児科のお年寄りバージョンといえばわかりやすいだろう。

「長年、高齢者の全身を診療してきた中で、糖尿病の人は認知症になりやすいことがわかってきたんです」(前同)

糖尿病になると、脳の記憶装置である"海馬(かいば)"の神経細胞にダメージが生じて、海馬の萎縮が進み、認知症に至るというのだ。

「現在は新たに、"糖尿病性認知症"という概念が生まれています。アルツハイマー病と診断されている人の中には、このタイプがかなり多く含まれている可能性があるでしょう」(同)

すでに糖尿病にかかっている人や高血糖ぎみの人は、きちんと治療する必要があるが、いわゆる「糖尿病予備軍」も、予防のために食事と運動を見直すべきだろう。

特に健康診断で「メタボ」や「メタボ予備軍」と指摘された御仁は要注意。「生活改善に加え、必要に応じて薬による治療を併用して血糖値をしっかりコントロールすることが、そのまま認知症の予防につながります」(同)

実際のところ、認知症治療の研究は世界中で進められており、症状の進行をある程度抑える薬は、いくつか実用化されている。

しかし、「医学・医療がここまで発展した現代でも、進行してしまった認知症をもとに戻す治療薬は、残念ながらまだ開発されていません」(健康雑誌記者) というのが現状なのだ。

  1. 1
  2. 2
  3. 3