典型的チワワだった能年玲奈

7位『ゲゲゲの女房』(10年)の松下奈緒(29)もまた同様だ。

コラムニストのペリー荻野氏は、この『ゲゲゲの女房』こそが、現在の朝ドラ隆盛のきっかけを作った作品だと断言する。

「それまで、路線的にも視聴率的にも迷走していた朝ドラでしたが、あの番組から、開始時間が、それまでの午前8時15分から8時スタートに切り替わったんです。向井理と松下奈緒という今ふうの美男美女に、戦前の男女を演じさせるという冒険が当たった、それで、NHKは自信を持ったんだと思います」

当時ではありえない、背の高い夫婦という設定は、その後の『ごちそうさん』でも繰り返され、NHKが自信を深めるのと同じく、松下は『ゲゲゲの女房』の成功を踏み台に、トップ女優へと上り詰めた。

朝ドラ出身女優は長丁場の撮影で鍛えられるため、その後、NHKで"即戦力"となるケースも多い。

そのため、自然と視聴者の目に触れる機会も増え、印象深くなるのかもしれない。

19位『純情きらり』(06年)の宮﨑あおい(28)も、朝ドラから08年の大河ドラマ『篤姫』の主演女優へと出世魚のように飛び出した女優だ。

24位『おひさま』(11年)の井上真央(27)も、ほぼ同じ。『おひさま』でNHKのお眼鏡にかない、ついに、来年の大河ドラマ『花燃ゆ』の主演女優の座をゲットした。

朝ドラを契機に女優としてのステータスを上昇させたのだ。

26位『ちりとてちん』(07年)で女性落語家を演じた貫地谷しほり(28)も、その独特の存在感で、大河や木曜時代劇に出演。

今やNHKのドラマに欠かせない存在となった。

「映画『スウィングガールズ』(04年)でデビューしたときから応援してたので、大河ドラマ(07年の『風林火山』)に続いて朝ドラの主人公になったときは、うれしかったのを覚えています」(タクシー運転手= 49)

こうした"即戦力"組になるかどうかは、神のみぞ知るところだが、朝ドラの"王道中の王道"と言えば、何色にも染まっていない、比較的演技の経験が少ない新人を発掘して、いきなり主演に据えてしまうやり方だ。

前出のペリー荻野氏は"朝ドラ女優チワワ説"を唱えている。

「朝ドラの新人は、基本的にチワワのようにかわいい存在です。あまり演技がうまくないので、心配でならないという気持ちと、今に何かやらかすんじゃないか、という好奇心で、ついつい見続けてしまうという傾向がある」

10位『あまちゃん』の能年玲奈(21)は、まさに典型的な"チワワ"だったという。

「周りを宮本信子や蟹江敬三のようなベテランが固めたことで、全体としては安心して見ていられる」(ペリー氏)

実は、こうしたタイプの元祖が、9位『澪つくし』(85年)の沢口靖子(49)だ。

今でこそ、ベテラン女優となり『科捜研の女』や『鉄道捜査官』シリーズなどで、成長した姿を見せてくれているが、この当時は、何かやらかすのでは……と、視聴者を常にハラハラさせるところが魅力でもあった。

「初めて見たとき、自分の夢の中から飛び出してきたかと思いました。演技はともかく、本当にキレイでした。もちろん今も美しいですが」(旋盤工= 56)

"朝ドラがデビュー作"という新人も多いが、その重圧からなかなか抜け出せないケースもある。

その最たる例が、8位、『ちゅらさん』(01年)の国仲涼子(35)だろう。確かに、新人ナース・えりい役は彼女にとって大のハマリ役だった。『ちゅらさん』人気も非常に高く、続編も次々と作られたが、そろそろ、『ちゅらさん』を超える作品との出会いが待たれる。

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