事に臨んでは危険を顧みず――宣誓の言葉に偽りはなかった。災害時の活動から見えてきた自衛隊の”精強無比”!!

発災から3週間が経過。水蒸気爆発により噴火した御嶽山(おんたけさん)(標高3067メートル)での救助活動における自衛官たちの活躍ぶりは、記憶に新しい。
「災害派遣された自衛官は延べ6000名近く。1日平均300名で、多い日は500名程度が派遣されています」(軍事ジャーナリスト・菊池雅之氏)
戦後最大の火山被害となった今回の噴火。救助は険しい山岳地帯で行われたため、山頂まで隊員を輸送するヘリはフル稼働。自衛隊機は1日平均5機態勢で、12~13便で運用されたという。

「現場に派遣されたのは、長野県知事から災害派遣要請を受けた松本駐屯地の陸上自衛隊第13普通科連隊が中心。ただ、関東一円の部隊が応援に派遣されています。日本一のNBC(核・生物・化学)兵器対処部隊である中央特殊武器防護隊(大宮駐屯地=埼玉)も、発災当初に派遣されています。有毒な火山ガスを検知するためでしょう。さらに、F-4ファントム戦闘機を改造したRF‐4偵察機、浜松の救難隊など、空自も援軍に駆けつけています。死者74名を出した8月の広島の土砂災害に続き、今回も"オール自衛隊"で任務に当たっていると言えます」(前同)

山頂はもとより、急斜面と格闘しながら登山道に沿って広範な捜索が続けられたが、現場隊員の"足"となったのが、大型輸送ヘリCH-47JA「チヌーク」だ。タンデムローター(機体の前後にローターが配置されている)のずんぐりとした機体を、テレビなどで目にした読者も多いだろう。

「チヌークなら、一度に50名以上の隊員を山頂まで運ぶことができます。山頂付近は標高3000メートル。この高度まで安全かつ迅速に人員を輸送できるヘリは警察や消防にはありません。警察、消防の隊員も自衛隊機に乗り込んでいるのは、そのせいですよ」(軍事ライター・黒鉦(くろがね)英夫氏)
東日本大震災はもちろん、わが国の災害現場で大活躍しているチヌーク。2007年の新潟県中越沖地震では、"陸の孤島"と化した村落に必要物資を運び、住民を救助した。

「御嶽山でのミッションは、非常にスピード感があると思います。災害派遣における自衛隊のスキルの高さには、目を見張るものがありますね」(軍事ジャーナリスト・古是三春氏)
それは、ある意味で当然のことだという。
「自衛隊と警察、消防との決定的な違いは、自衛隊は軍事組織であるということです。軍隊は任務を"自己完結"する。現場に急行して、現地での作業、隊員の食料、宿泊その他をすべて組織内で完結できるんです。有名な女性ジャーナリストの方が"御嶽山に自衛隊が行くよりも、もっと警察の機動隊を出せばいい"と発言していましたが、彼女は"自衛隊しか対応できない災害がある"ということを、まったく理解していない」(前出・黒鉦氏)

また、一部メディアで"戦車まで持ち出す必要があるのか"といった論調もあるが、
「噴石の防御と、タイヤでは火山灰に埋もれるためキャタピラ式の車両が絶対に必要」(自衛隊関係者)
と明快な理由がある。
「余談ですが、今回投入したのは、戦車ではなく装甲戦闘車(笑)。戦車の砲身の内径は120ミリ。装甲戦闘車は35ミリ程度ですからね。そもそも警察や消防は地方公務員。県をまたいでの活動は原則不可能。また、災害現場に動員を増やせば、担当地域の治安がおろそかになってしまいます。国家公務員で、自己完結した行動が取れる自衛隊を動員するのは必然なんです」(防衛省関係者)

とはいえ、自衛隊の本来の任務は、わが国の防衛。有事――端的に言えば侵略軍との戦闘である。
「極限の戦闘環境という事態を想定し、訓練しているからこそ、災害という突発的事態に冷静に対応できるんです」(前出・古是氏)
今回の御嶽山噴火でも、
「指揮所に詰める警察関係者は、"うちができないことは全部、自衛隊に回している"と話していた。警察、消防の隊員も猛者ぞろいですが、自衛官には一目置いていますよ」(地元紙記者)

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