認知症の父に兄が馬乗りに…

「B氏のようなケースでは、とりあえず2分の1ずつ所有権登記し、家賃名目で、B氏が月々、弟に相場分の支払いをするのが、一つの解決方法でしょう」
こうアドバイスしてくれたのは、遺産相続に詳しい「勝部法律事務所」(東京都たまき中央区)の勝部環震弁護士。 ただ、猫の死体が弟の仕業とすると、うまくいくかどうかわからないが……。続いて、C氏の場合を見てみよう。

トラブルの元は「遺言書」だった。
2年前に父親が死去。遺言書があり、「遺産はすべて兄に」と書かれていたが、弟のC氏はそれが"偽装"されたと考え、無効確認訴訟を起こして争っている。
「父は長く認知症でした。面倒は兄が見ていたんですが、亡くなる1か月ほど前、私の妻が家を訪ねると、兄が父に馬乗りになって何か紙に書かせているのを見たと言うんです」(C氏)

それを目撃した時期と遺言書(自筆証書遺言)の日付は、ほぼ一致するという。
この件に関して勝部弁護士は、
「目撃したというだけでは難しいでしょう。このように私製の遺言書には限界があるんです。では、公証人役場が作成してくれる『公正証書遺言』は大丈夫かと言えば、そうとも言えません。たとえば遺言人が病気の場合、公証人が出張して作成してくれます。ですが、その実態はと言えば、あらかじめ親族が作成したとされる遺言書の下書きを公証人が読み聞かせ、遺言人が"はい"と答えただけでOKというケースもあるんです」

ただ、やはり遺言書は、どんなものでも作成しておくと、一般的にトラブルが減るということで、残すケースが増えているとか。
次に遺言書がなかったため、後妻に手玉に取られたD氏(50代)のケースを見てみよう。
約1年前、父親が死去。 小さな会社を営んでいた父には、それなりの財産があるはずだった。だが、数年前、父と再婚した後妻は、彼女と同様に法定相続人であるD氏に、
「お父さんは借金も多く、差し引き2000万円ほどしか遺産はないの。だから、あなたは1000万円で納得して」
と言って合意書にハンコを求めてきたという。

「確かに、大きな不動産はなかったとはいえ、あの守銭奴の後妻が正直に半分を出すはずがない」(D氏)
そう思ったD氏は、後妻に亡父の財産状況開示を求めたところ、態度が豹変。鬼の形相で
「私を疑うの?それなら一銭もやらないよ!」と言い放ったとか。

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