優良ドライバーに立ちはだかる怠慢かつ悪質な交通取締り。その怒りの矛先を、現場を指揮する幹部に直接ぶつけてきた!

「こんなデタラメが20年近くにわたって放置されていたなんて、全国のドライバーは"いい加減にしろ!"と、警察に怒りの声を上げるべきですよ!」
顔を真っ赤にして口角泡を飛ばすのは、本誌の交通関連記事でお馴染みの、熱血道路交通評論家の鶴田光秋氏だ。
鶴田氏の怒りも無理はない。10月末、広島県警は広島市安佐南区の交差点での交通取締りに関し、その根拠となる現場の状況を記載した「交通規制台帳」の内容が約20年もの間、誤ったままだったことを明らかにしたからだ。その結果、この20年間で、同交差点で処理された反則切符は実に1000件以上という。

「1994年の道路計画で、この交差点が3車線から4車線に車線が増えたんですが、この変更を交通規制台帳に反映させていなかった。本来は取締りの都度、台帳の内容を確認しなければいけないわけで、間違いに気づく機会はいくらでもあったわけですから、普段からいかにズサンな取締りをしてきたかの証左ですよ」(広島県警担当記者)
しかも、この件を受けて県警が県内を一斉点検したところ、同様のミスが37交差点、52か所で見つかったというから、優良ドライバーにとって、こんなふざけた話はない。

「今年5月には埼玉県内の外環道で、車両通行帯違反の取締りに必要な県公安委員会の意思決定がなく、交通規制の効力が発生しないまま、8年間で約2400人を取り締まっていたことが発覚しました。その反則金合計が1400万円以上といいますから、バカげた話ですよ」(前出・鶴田氏)
こうなると、これらの不祥事はたまたま発覚しただけで、他の都道府県では、いまだに判明していない不当な取締りが今日も行われているのではないか――そう考えるのが自然だろう。

その疑問をぶつけられる関係者はいないかと、各方面に取材をかけたところ、現役警察幹部のA氏への接触に成功。鶴田氏とともに直撃することとなった。
警察には階級があり、ある段階まではそれぞれの都道府県に属する地方公務員だが、ある程度出世すると、形式上、退職して国家公務員となる。A氏は、その一人であるから、押しも押されもせぬ警察幹部である。

鶴田「最初にお聞きしたいのは、広島や埼玉の件ですよ。なぜ、こんなことが起きるんですか!?」

A氏「どちらも公安委員会へ上申のし忘れですね。手続き自体は簡単なんですが、なんで忘れてしまったのか。ただ、道路改良ってしょっちゅうやっていて、そのたびに規制台帳も変更しなければいけませんから……」

鶴田「そんな無責任なことじゃ、困るんですよ。ドライバーの中には、取締りの結果、仕事を失う可能性もあるんですから」

A氏「恐らく、交通規制課の仕事というものが、1人で広範囲を担当しているためだと思います。かなり大きい範囲でも、せいぜい2人。その人数で、標識、信号など、無数の対象物を管理しなければいけない。そうなると、なかなか手が回らないという現実があって、規制台帳と実際の現場を常に突き合わせるだけの余力がないんです」

鶴田「人数を増やすことはできないんですか?」

A氏「増やせないんですよ。DV犯罪や振り込め詐欺、危険ドラッグ対策のような話題のあるところに人を集めざるをえない。そうなると、増員したいのは山々ですが、内部で具体的な議論にはならないんです」

鶴田「どうして、人手不足の部署に人数を配分できないのですか?」

警「国民にPRできないからですよ。全国民が被害者になりうるモノのほうが、国会でも説明しやすく増員しやすい。規制課だけでなく、交通部全体の問題として取り組むべきです。それが現実なんです」

A氏も、この現状でいいとはまったく思っていないと言うが、これだけ大きな問題が起きても、「国民へのPRが第一」が警察組織のホンネでは、今後、第3、第4のミスが発覚することはほぼ確実だろう。

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