春と秋に年2回行われる大々的な全国交通安全運動、時折、喧伝される道路交通法違反者のニュース……。ドライバーにとっては”不満“と”疑問“ばかりの取締り強化だが、そこには、我ら市民には知られざる秘密があった――。

お祭り騒ぎの「全国交通安全運動」、告知なしの「逮捕強化」、芸能人たちがこぞって出演する「交通安全ポスターの怪」

9月21日から30日まで行われた『秋の全国交通安全運動』が終了し、ホッとひと息ついているドライバーの方も多いだろう。

10日間みっちりと、地域の交差点などに警察官が立ち、各所にテントや「全国交通安全運動実施中」ののぼりが立つ光景は、普段、交通ルールを正しく守っている善良ドライバーでも緊張してしまうはずだ。

「この運動は、"交通事故防止の徹底を図ること"などを目的として、春と秋の年2回行われます。確かにこの目的だけ見れば、素晴らしい運動です。しかし、隠れて取締りを行ったり、強引にキップにサインさせるような不当取締りが、依然として多く行われている。実際、期間中は、"無理やり違反を認めさせられた"という報告が増えるんです。これでは大義名分の下に正当化された"取締りのための取締り運動"と言っても過言ではないですよ!」

本誌でお馴染みの道路交通評論家・鶴田光秋氏も、こう捲し立てる。たびたび行われている"取締り強化"には、日常の交通マナーと同様に気をつけなければならないことが山積しているようだ。

ではまず、月別の取締り検挙数を見てみよう。
「2011年の警視庁の月別取締り件数を見てみると、1~3月は7万件前後で推移しているにもかかわらず、『春の全国交通安全運動』が行なわれる4月には、9万3025件とドンと増える。そして5月から減り始め、『秋の~』が行なわれる9月に、また4月と同等程度の9万件近くにまで上ります」

交通ジャーナリストの今井亮一氏がこう言うように、運動期間中に検挙数が急増しているのは明らかだ。警察官の姿をよく目にするため、ドライバーも重々注意をしているはずなのに、である。何か、裏があるに違いないと推測してしまうのも無理はない。

実際、ある警察関係OBは当時を振り返り、こう語る。
「ウチでは"一人何件"といった露骨なノルマはありませんでしたが、交通課長や課長代理が朝礼夕礼の挨拶の中で、"いよいよ、始まったな"といった言葉をチラつかせるんです。我々にとっては、すなわち、"少なくとも前年以上の成果を上げろ"とか、"検挙数を上げろ!"というプレッシャーにしか聞こえませんでしたね」

検挙実績は、昇進にも影響するという噂もある。そのために、現場の人間は運動期間中、とりわけ必死に"検挙"するというのだ。

「原則、交通課の職員は、運動期間の10 日間は無休でフル出勤することが義務づけられているそうです。そして、警官たち総出で些細な違反もキップを切っていき、"実績"を稼ぐというわけですね。シートベルトの未装着や、運転中の携帯電話の使用など、警告、指導をするべき取り締まりやすい違反を、特に狙ってくるでしょうね」(前出・鶴田氏)

というから、ご立派な運動の目的と実態とが、かけ離れていることがよくわかるだろう。

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