"契約件数トップ"は無意味

外資系保険会社『AIG』グループで契約高・契約件数ともに世界一になった経歴を持ち、現在、保険代理店「保険を見直し屋」の代表を務める納寛文氏は、こう指摘する。
「終身医療保険で、1回の入院につき60日を保障すると謳っていても、入院と次の入院の間隔が180日以上空いていないと、継続していた入院とみなされるんです。重病だと闘病期間が1年以上になることもあるうえ、いったん退院してから、次に入院するまで180日も空きません。入院保障の60日などすぐに超えます。また、医療費負担の上限は健康保険で定められており、60日以内の入院なら8万8800円(70歳以上、一般世帯者)。1年間入院しても、70万円(69歳以下、収入約370~770万円未満)で足ります。終身医療保険に70万円以上支払うのはムダの極みです」

最近よく耳にする『日帰り入院』にも、こんな罠が……。
「病院から入院と言われない限り、処置室での治療に入院費は発生せず、医療費明細書に入院費が記載されることもありません。日帰りで入院費がかかる実例を説明すべきです」
また介護保険にも要注意。
「民間の介護保険の支払い条件は、"主に慢性疾患や難病が原因で要介護2認定以上"というものが一般的です。すでに、これらの傷病に当てはまる場合は、保険に入れないケースがほとんど。反対に、現在健康で、加入可能な人の場合、所定の疾病に今後該当する確率はかなり低い。末期がんも条件の一つですが、40~64歳で末期がんだと、進行が早いため、介護が必要な期間は多くなく、保険の支払いが無駄になる確率は高い」

さらに、こう警告する。
「保障に該当する確率がほとんどないと思われる条件をつけて保障するという詐欺まがいの商品を挙げればキリがありません」

そんなとき、頼りにしたくなるのが、テレビCMなどでも盛んに宣伝されている保険の無料相談所。しかし、過信は禁物だという。
「無料で相談に乗っているだけでは商売になりません。様々な保険会社の商品を代理販売し、販売手数料で儲けているんです。ゆえに、相談者に適した保険より、販売手数料が高い商品をプッシュすることもあります。"売る"のが本業なので、公的医療保険制度、約款の保障条件の意味などの説明がない」
有料であっても中立の立場で適切な判断をしてくれる相談所を選んだほうが、結局は節約につながる。

さらに、後田氏は、注意すべきセールストークについても明かしてくれた。
「"契約件数トップ"という売り文句に引っかかってはいけません。保険のことをよく知らない素人がたくさん入っていても無意味です。保障内容について触れていない、安易な営業に乗らないことです」

お守り代わりに入ってきた保険を、今さらやめるのは勇気がいるが
「公共事業と同じで、無駄ならすぐにやめること」(後田氏)。
保険に頼りすぎないことが、豊かな老後への第一歩なのだ。

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