入院、がん、要介護。次から次へと不安をあおられ、安心料は大暴騰! 老後貧乏になる前に、見直すべし!

多くの人が"なんとなく"入っている生命保険。なかでも、一般的な定期保険は、40代以降が更新のタイミング。「保険料が跳ね上がって大慌てした」「営業マンの勧めで更新や転換をしたら損をした」なんて例も後を絶たない。
そうした事態を防ぐためにも、中高年こそ"生命保険のカラクリ"を知っておく必要がある。

「保険とは、加入者が必ず損をする仕組みになっているんです」
こう保険に異を唱えるのが、元保険営業マンで現在はオフィスバトン「保険相談室」代表で、『生命保険の「罠」』などの著書で知られる後田亨氏だ。
「入院やケガで資産を失いたくない、老後の資金を食いつぶしたくない。そういった理由で入る人がほとんどですが、保険はお金を前払いして将来に備える手段。その方法自体、優れているのか考えるべきです」

そもそも保険とはどういう仕組みなのか、ここでおさらいしておこう。
「保険料を集め、そこから保険会社の人件費や宣伝費といった経費を差し引き、残ったお金を有事の際に分配する仕組みです。よって、払い込み総額に対して、リターンは少なくなって当然。実際、終身タイプの医療保険の場合、還元率は70%程度と推察され、競馬より割が悪い計算になります」

老後になると病気などで回収機会は増えるものの、不利な"賭け"に投じるお金も増える。さらに、保険会社は各商品の手数料率や還元率を公表しないケースがほとんどで、かなり不透明な商品なのだという。
「仮に100万円を保険に使っても、リターンはそれ以下。それなら100万円を貯蓄して、もしもの際にはそこから捻出したほうが、余計なコストも手間もかかりません」
それゆえ、極力、加入しない方が望ましく、入る場合でも"必要最低限"の保障にすべきだという。

「いろいろな特約や積立機能がついた複雑な商品ほど、無駄が多いんです。主に債券で運用する個人年金保険だって、保険料から手数料が引かれているわけです。それならば、自分で個人向け国債でも買えばいい。100万円払い込んで、仮に10年後に110万円保険金が受け取れるとしても、契約当初は元本割れリスクもあるし、金利や物価の上下で、お金の価値も変わります」

さらに、
「介護保険にせよ、要介護状態になる年齢は75歳以降がほとんど。今50歳だとしたら、25年も先のことを憂慮して資金を投じるのは、賢明な選択でしょうか? "必要な時"に仕方なく利用するというスタンスがベストです」(以上、後田氏)
では保険が必要な時とは、どんな場合なのだろうか。

「保険での備えに適しているリスクとは、"発生頻度が少なく、被害が大きい"事態です」こう語るのはフィナンシャルプランナー(FP)で「マネーライフプランニング」代表の小屋洋一氏。

「たとえば、妻子を残して突然死んだり、現役世代で寝たきり生活になってしまう、といったリスクです。一方、病気やケガで短期入院するなど、発生頻度は高くても、生活への影響がそれほど大きくない事柄については、必ずしも保険でまかなう必要はありません」
現に、前出の後田氏は「保険のプロが選ぶのは、死亡保障のみの、掛け捨て定期保険。他は重視しない」と証言し、こう続ける。
「保険会社の社員は自社商品に入っていないことも珍しくない。勤務先で加入できて保険料が安い『団体保険』を好んでいます。自営業者など『団体保険』に入れない方で、大型の死亡保障が不要であれば『都道府県民共済(総合保障型)』を選ぶ手もあります」

加えて、前出の小屋氏は、保険に入る際は、必要となる保障額を試算することが重要だと主張する。
「死亡保障を検討するなら、世帯主が急逝した場合、家族にいくらお金が入るのかをあらかじめ調べておきます。会社の死亡退職金や死亡見舞金、弔慰金、勤務先の遺族年金、育英年金制度を調べたうえで、公的保障である遺族基礎年金、遺族厚生年金を計算しましょう」

もらえる金額がわかったら、次は支出を計算。
「子どもがいる人は予定教育費、成人するまでにかかる生活費を試算します。現在の貯蓄と、死後にもらえる金額の合計から、こうした出費を差し引いた不足分が必要保障額です。これを保険で補えばいいんです」

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