インド人に患者が少ない理由

また、野菜をサラダで食べるときも、市販のドレッシングやマヨネーズよりオリーブオイルと塩のほうがいい。ドレッシングやマヨネーズには血管のしなやかさを失わせ、認知症を誘発する恐れがあるサラダオイルが使われているからだ。

その点、『脳を老化させない食べ物』(主婦と生活社)などの著書がある、医学ジャーナリストの山田雅久氏は、「オリーブオイルは世界的にアルツハイマーの予防効果が認められた食材」と語る。
「コロンビア大学の研究では、オリーブオイルをメインにした地中海料理を食べている人は、アルツハイマーになる確率がほぼ半分になるという結果でした」

なお、150万人を対象としたフィレンツェ大学の研究でも、地中海沿岸地域の住人はアルツハイマーになる人が少ないことが明らかになっている。これも、オリーブオイル効果とは無関係ではなさそうだ。
ポリフェノールを多く含み、動脈硬化や心筋梗塞のリスクを減らすと、近頃注目を集めているだけに、スーパーで売っているようなハーブ入りの塩などを混ぜてサラダにかければ、アッサリとしてうまいうえに健康効果も期待できるのだ。
食事や休憩時間の飲み物にも、脳に良い物がある。その筆頭は緑茶。緑茶の渋みや苦味成分のカテキンは、静岡県立大学の山田浩教授の研究で、物忘れなどの近時記憶を改善させる効果があることが明らかになっている。
また、カテキンには、前述したβ-アミロイドの蓄積を抑えるばかりか、分解する効果も確認され、「一日3杯の緑茶で認知症発症リスクが抑えられた」という疫学調査も報告されている。

「オレはコーヒー党なんだけど」という方も心配はいらない。前出の山田氏によると、コーヒーにも同じ効果が期待できるという。
「ある追跡調査で、中高年期に毎日コーヒーを3~5杯飲む人は、それ以下の人と比べて、認知症リスクが65%少なくなるという結果が出ています」
コーヒータイムのお茶受けに最適なのが、チョコレート。特に、カカオの含有量が多いダークチョコレートがオススメだ。

「カカオは血流を良くして認知力を向上させる働きがあります。米国ハーバード大学で、被験者にカカオ成分が多いココアを毎日2杯飲ませる実験を行ったところ、1週間で8%、2週間で10%も脳血流が良くなったことが報告されています」(山田氏)

ちなみに、酒を飲むなら、米国やオランダの研究で「アルツハイマーのリスクが半減する」ことが認められた赤ワインがベストだろう。

さて、ファミレスやコンビニの定番になっている、身近な食べ物の中にも、認知症予防につながるものがある。カレーもその一つ。
「世界的にアルツハイマー患者が非常に少ないのはインド。これはカレーを常食しているおかげと言われています。カレーに欠かせないスパイス・ウコンには、クルクミンという成分が含まれています。これには記憶力の低下を抑える効果が確認され、マウスの実験でもクルクミンを少量与えるとβ-アミロイドの蓄積によってできるプラーク(老人斑)が40%少なくなるという結果が出ました」(前出の生田博士)

カレーはみそ汁同様、どんな具材にもマッチする。前述した緑の野菜や、脳の炎症を防ぐ作用があるセロリなどを刻んで入れたい。また、卵料理も認知症予防には効果がある。
「卵に含まれるコリンは脳内神経伝達物質のアセチルコリンの材料になります。アルツハイマー患者の脳にはアセチルコリンが少なく、アセチルコリン不足が認知症の原因とも考えられています。認知症予防のためにも、一日に卵2個を食べるのが理想です」(山田氏)

他にも、レバー、玄米、ホタテ、カキ、イカなどに多く含まれるナイアシン(ビタミンB群)は米国でアルツハイマーに効果があるとして注目されている。
また、ナイアシンに限らず、ビタミンB群は脳の機能維持に欠かせない成分。たとえば、B12の血中濃度が高い人は低い人に比べて、脳の萎縮が6分の1に抑えられたという報告もある。

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