安倍政権と詐欺の意外な接点

特殊詐欺が横行している一方で、対面詐欺がなくなっているわけではない。
今回の年金流出に絡んだ対面詐欺も、これから十分に起こりうるという。
「日本年金機構の職員を名乗って、対象者の自宅を訪問。"このたびは本当に申し訳ありませんでした"と土下座謝罪なんかしてから菓子折を渡せば、詐欺師だと疑わずに信じる人は多い。信じ込んだ人間に、"年金の振込実態を確認するため、通帳を拝見してもよろしいですか?"と聞けば、簡単に預けてくれる。あとは、金を引き出せばいいだけだから」(長澤氏)

もし、少しでも「怪しい」と感じ、断ろうとしても、詐欺師は別の手段に出る可能性があると長澤氏は言う。
「断るべくドアを閉めようとしたり、警察に電話しそうになった場合には、力ずくで脅すんだよ。老人からすれば、力で勝てると思わないから、さらなる暴行を匂わせて、"この人たちと関わりたくない"と思わせれば、あとは"お金さえ払えば、この場が終わる"と感じ、仕方なく金を出してくれるよ」

これではもはや詐欺ではなく恐喝としか言いようがないが、似た例はほかにもあるという。その一つを、長澤氏に教えてもらった。
まずは、実行犯が対象者に接近、「すいません、一瞬だけ、これを持っていてもらえませんか?」と無理矢理カバンや紙袋を手に持たせ、別の人間が隠れて、その様子をカメラで撮影するのだという。

「翌日、その対象者宅を訪問、撮影した写真を出して、"覚醒剤密輸や盗難事件などに加担した証拠を持っている。警察に突き出すぞ"と脅すだけなんだ。あとは、"口止め料""和解金"などと名目を付けて、その場で金を受け取ったり、架空の弁護士を立てて、そいつに渡させてもいい」

このような、事件の加害者に仕立て上げる手口が急増しているというが、それには理由があると言う。
「被害者が"怪しい"と思っても、"警察に訴え出て、もし本当に逮捕されたらどうしよう"との不安から、名乗り出る例はかなり少ないんだ」

対面詐欺のターゲットも、「裏社会に回っている個人情報を精査して決めることが多い」(同)というから、年金流出事件の怖さを改めて感じざるをえない。
「安倍政権は、今年10月までに国民一人一人に"背番号"を付与するマイナンバー制度を導入するつもりですが、今回の流出事件のように、この制度が国民の詐欺被害リスクを高めることになりかねません」(全国紙政治部デスク)

いつ、どこで危機にさらされているかわからない現代社会。その災難は、あなたの身に、いつ降りかかってきてもおかしくない。

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