噛むことだけで歯周病予防に

「私が行った実験では、卑弥呼の時代には1回の食事で4000回だった"噛む回数"が、現在は620回、子どもに至っては170回となっています。(11)現代人は噛む回数が少ない。噛むと、普段よりも唾液が10~20倍分泌されるんですが、(12)唾液に含まれるスタテリンというタンパク質は歯を強くし、リゾチームという酵素は強力な自然の殺菌作用を持っています」(齋藤氏)

よく噛まないと、満腹中枢が刺激されず、過食にもなる。つまり(13)噛まないで食べると肥満、高血圧、動脈硬化にもつながるという。
「噛むことが人との感性や感情を司る"右脳"、また記憶を司る"海馬"の働きを活性化させることもわかっています」(齋藤氏)
そう、(14)噛むことは、脳にも良いのだ。

一方、唾液中にはNGFという神経成長因子が含まれ、それが(15)認知症の予防にもなるという。歯は認知症と密接な関係にある。
「知り合いの歯科医の患者さんの話ですが、(16)歯の噛み合わせを治したら、認知症が目に見えて改善したケースがあります」(齋藤氏)

前出の釣部氏も、
「杖をついて来院した歯の悪い患者さんが、自分に合った義歯に変えたら、帰るとき杖を使わずに歩けるようになっていて、杖を病院に置いてきてしまったという話があるんです。ある診療所では、同様のケースで4人に1人が立ち上がれるようになったといいます。(17)適正な義歯を使うことで、脳の血流や神経の働きが良くなり、歩けるようになったんでしょう」

噛み合わせも大切だが、歯磨きなど"プラークコントロール"も重要。だが、自分の力だけでは不十分。齋藤氏は(18)2~3か月に一度、歯科で歯垢を除去し、口腔内を清掃してもらうことをオススメするのだ。
「自分で歯磨きするだけでは、歯垢はなかなか取れません。(19)歯周病菌は、歯垢に含まれていますから」

釣部氏も、こう言う。
「アメリカ人の成人の平均虫歯本数は、たったの1本。これに対し、わが国民は8本という統計があります。アメリカは国民皆保険でないうえ、治療費がバカ高いので、ともかく予防に力を入れている。予防で十分対応できるんです。(20)歯周病も虫歯も、9割くらいの人は自己責任で回避できるといわれるんです」

そして、病院選びも大切だ。日本は歯科医院はコンビニより多く、約7万軒もあって過当競争。目先の診療報酬欲しさに、安易な治療に手を染める"ヤブ歯科医"も数多くいるからだ。釣部氏が言う。
「基本的に、(21)大学病院は受診しないこと。大学は論文を書くのがメインで、実験的医療をされかねません。本当に腕が良いなら、大学病院に残らないでしょう」

続けて、「テレビに出てたり、本を出している有名な歯科医も考えもの。腕が良ければ人気があるし、テレビに出てる時間などないはず。(22)有名な歯医者は、かえって危ない可能性もあります」

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