"代打の切り札・由伸"の喪失
紆余曲折を経て誕生した新指揮官は、28日、秋季キャンプ第2クールが行われる川崎市内のジャイアンツ球場に、スーツにネクタイ姿で登場。練習前には、室内練習場で全選手、スタッフに向けて訓示した。
「今季限りで現役を引退し、監督を務めることになりました。私自身、強い覚悟を持って決断しました。ここにいる選手、スタッフすべての人が強い覚悟を持って、日本一に向けて進んでいってほしいと思います」
しかし、"強い覚悟"とは裏腹に、現実的には"日本一"の奪還には、かなりの困難が伴うと思われる。今年の巨人がセ・リーグ2位という順位につけたのは、12球団一の防御率2.78を誇る投手陣の頑張りがあればこそ。一方のチーム打率は、.243の貧打で、12球団で11番目の惨憺(さんたん)たる成績だ。目立った補強もない現在、来季、この貧打戦が突然覚醒する可能性は極めて低いと言わざるをえない。
「特に深刻なのは、坂本勇人、長野久義という次代の巨人を担うべき人材が伸び悩んでいること。阿部慎之助、村田修一といったベテランには、もはや伸び代はないし、新しい戦力も出てこない。このままでは苦しい」(スポーツ紙デスク)
巨人は現在、次なる4番候補として、今季限りで中日退団が濃厚なルナの獲得に照準を合わせているという。
「ルナにしても35歳だが、フロントは阿部を、もはや4番候補としては当てにしていないということだ」(前出のベテラン記者)
また、自身が監督に就任したことは、今季、代打に限定すれば47打数15安打の打率.395、8四死球も加われば出塁率が.489にもなった"代打の切り札・由伸"がいなくなることを意味する。同時に、今年98試合に出場した"守備の要・井端"も現役を退いた。
「今のところ、この穴を埋めるような選手はいません」(前出のデスク)
投手陣とて、盤石ではない。内海哲也、杉内俊哉の両エースが故障でフル稼働できなかった今シーズンは、菅野智之、マイコラス、ポレダに大きな負担をかけた。
「特に今シーズン、13勝、防御率1.92と、大活躍したマイコラスは、メジャーからのオファーが来て、退団必至という状況でしたが、2年で4.8億円という大型契約が実を結び、残留が決定。これは巨人から新監督に贈る唯一に近いプレゼントでしょうね」(前同)
クローザー転向が奏功し、36セーブを挙げた澤村拓一はまだしも、山口鉄也、マシソンら中継ぎ陣にも、以前ほどの信頼が置けない。
「加えて、阿部の後釜となる正捕手が、いまだに育っていないことも問題。来季こそ、小林誠司には奮起してほしいでしょう」(同)
また、由伸監督自身の"性格"も気になる。
「原監督は、成績の悪いベテラン選手の打順を平気で落としたりする非情采配を見せていましたが、心優しくて、根が良い人である由伸に、ああいった芸当ができるとは思えません」(前出の球団関係者)
しかし、前出の橋本氏は言う。
「球界には、監督が変われば、チーム内の淀んだ空気が吹っ飛んで、一気に活性化するということがよくあります。今までくすぶっていた人材が、新監督の誕生で一気に開花する可能性もあります」
高橋由伸新監督が、巨人の闇を振り払うことができるのだろうか――。

本日の新着記事を読む

  1. 1
  2. 2
  3. 3