マイナンバー詐欺の3タイプ
実際、消費者庁などは詐欺への注意喚起をインターネット上に10月6日に掲載。にもかかわらず、この日、マイナンバーに関する初めての現金被害が発生した。
「6~8日の3日間で、20件の詐欺報告がありました。事件化していないものも含め、すでに数百、数千の"詐欺事案"が発生していると思われます」(同)
もしかしたら、読者の皆さんも、すでにマイナンバー詐欺に接しているかもしれないのだ。犯罪集団への取材を重ねる裏社会に詳しい記者が、
「"マイナンバーはまさに特需。利用しない手はない"と彼らは言うので、あらかじめ手口を知って、詐欺被害防止に活用すべきです」
と言うから、ぜひ、その手口を把握しておきたい。
この記者によると、マイナンバー詐欺は、大きく3つに分けられるという。まず一つ目は、マイナンバーの"利用タイプ"だ。
「マイナンバー詐欺の王道と言えるパターン」(前同)だけに、最警戒すべきもの。役所職員などと名乗る人物から電話がかかってきて、
「あなたのマイナンバーが流出しているようです。すぐに取り消し料を払ってください」
と急かされ、数十万円から数百万円の現金の振り込みを要求されるという単純なもの。さらに複雑なものもある。
中には、「孤児施設に寄付したいが、自分の名前では恥ずかしくてできないので、マイナンバーを貸してほしい」と依頼され、教えると、その施設職員と名乗る人物から電話がかかってきて、
「もしかして、マイナンバーを誰かに教えませんでした? 他人に教えるのは犯罪で、逮捕されます」
と脅し、現金を要求する事例もあり、関東に住む70代女性が、この手口で数百万円を騙し取られたというのだ。
「不安を煽ったり、複数の人物が絡む手口は、マイナンバーに限らず、詐欺集団の"定石"です」(同)
マイナンバー詐欺の二つ目は、"便乗タイプ"だ。マイナンバーで詐欺被害に遭わないように管理するという名目で数十万円を要求する例や、
「過去の滞納料金があるので、マイナンバーを交付できません。すぐに支払ってください」
と偽って、ウソの滞納料金を支払わせようとするなど、マイナンバーを把握していなくても、騙せるものばかり。
他にも、自営業や農家、中小企業に対し、「取引相手のマイナンバーを管理する義務がこれから生じ、流出すると刑事問題になる」と脅して、高価な金庫を売りつけるパターンもある。
さらに、「マイナンバー制度が導入されると、貯金が税務署に狙われるので、資産化したほうがいい」と謳って、金やダイヤを売りつけるという例もあるそうだ。
そして三つ目は、マイナンバーにかこつけた"情報収集タイプ"だ。
このタイプは、マイナンバーそのものとは関係ない。しかし、役所の職員を名乗る人物などが、「マイナンバーに関するアンケートです」「マイナンバーが正しいかチェックします」と偽り、生年月日や家族構成、職場を聞き出すというものだ。
「露骨な場合は、銀行口座と、その暗証番号、クレジットカード番号など、金銭被害に直接結びつく情報を聞き出そうとします」(同)
この場合、いつの間にか預金が抜き出されたり、不正にカード利用をされることで、当事者が気づきにくいという難点がある。
以上、「利用タイプ」「便乗タイプ」「情報収集タイプ」の3つが、マイナンバー詐欺の大きな被害パターンということになる。さらに裏社会に詳しい記者によると、「今後、数年後の被害が最も怖い」と言うのだが、どういうことか。
「今、制度の内容がよく分からない状況で手続きをしなければならず、マイナンバーや付随する個人情報を思わず誰かに教えてしまうことがあるでしょう。犯罪集団は、それをすぐに詐欺に利用せずに、数年後に、マイナンバー制度が銀行取引や証券などに運用を拡大してから、詐欺に利用する可能性があるんです。マイナンバーは死ぬまで変わりませんから、今、漏らした情報は数年後、数十年後も有効なんです」

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