そこで、予定されているのが預金口座との紐付けだ。「マイナンバーの利用範囲は、最初は税金、年金などの社会保障、災害対策の3つのみに限られますが、18年からは預貯金口座とも結びつく可能性があります」(前同) 現状では、金融機関から個人番号を求められても告知は任意だが、義務化が検討されているという。「義務化されれば、国は国民の預貯金をすべて把握できます」(同)

 それによって、政府に目をつけられるのが自営業者。「サラリーマンの場合、毎月の給与から自動的に税金が引かれています。一方、自営業者の場合は、税金は“天引き”ではないので、経費の水増しをすれば、税金をほとんど払わなくすることも可能です」(同)

 中でも、特に狙われているのがネット通販業者。「不特定多数の客を相手にする、事業の概要が分かりにくい、事業者を特定しにくいと、脱税しやすい条件を備えています。まったく申告しないほか、クレジット、銀行振込、郵便為替、代引など入金方法をいくつも使い、そのうちの1つの収入をそっくり抜いたり、悪質業者だと仮名や他人名義の口座を使う場合も」(同) しかしマイナンバーで監視しておけば、銀行口座の本当の持ち主を特定し、脱税で摘発できる可能性が高くなるという。

 また同様に、領収書を出さないキャバレーなどの飲食店や風俗店もピンチだ。「こうした業種で儲ける経営者は表に顔を出すこともありません。しかし、脱税して得た資金はどこかの金融機関に預けていることが多い。本気で脱税しようと思えばタンス預金など現金で保管することもありますが、手間がかかりますから。そして、マイナンバーが預金と紐付けされ、疑わしい口座を把握できれば、その口座の金の流れを追うことで実質的な経営者も判明しやすくなります」(同)

 一方、マイナンバー制度で得をするのはサラリーマン。「富裕層への課税強化が実現すれば、税収が増えるので、将来の消費税率アップといった増税を防げます。また、年金の記録も今より格段に正確になるので、年金の漏れを防げます。年金漏れの原因の1つは、受給対象者の職場や住所が変わった際、その人の年金を管理する役所の部署も変わり、データの移行にミスが出ることでした」(同)

 ただし、こっそりバイトをしている人は要注意! 会社にバレて、クビという事態もありうるという。「たとえば、会社就労後に居酒屋でアルバイトをしている場合、本業で得た年間所得に副業での収入が自動的に加算され、それに基づいて算出された住民税が、勤務先の給与から天引きされます。他の同じ収入の社員より、税額が高くなるため、副業がバレるというわけです」(弁護士)

 誰がどこで収入を得たのかは、マイナンバーによって簡単に把握できるのだ。「対策の1つとして、法人設立の手もあります。法人の場合、源泉徴収されないので住民税はアップしませんから」(前出の光嶋氏)

 では、副業として、知り合いのスナックの女性を自宅まで送り届ける仕事をしている場合はどうだろう。「ドライバーへの謝礼を店側が経費として計上しないなら、いくらマイナンバーが導入されても把握できませんからバレません。ただし、業務として行っていれば、それは“白タク”行為で、そもそも違法の可能性があります」(前同)

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