この“口約束”で、○万円払いますからと言われれば、“それだけもらえれば……”と思いがちだが、事態はそう簡単ではないという。「示談はすぐに行わないことが大事なんです。というのも、全治○か月のケガだとしても、あくまでもそれは目安ですし、事故直後は体に異変がなくても、1週間や1か月してから、症状が現れることがよくあります。しかも、ダメージが脳や内臓にいってれば、生活が困難になったり、命の危険に陥ることもあり、治療費が100万円以上になることだってありえます。もし、示談が成立してしまっていれば、その後の補償は出ませんからね。その道の“プロ”である保険会社などに任せることが望ましいです」(前同)

 つまり、(7)示談はケガが治ってから開始すべき、というワケだ。その際、病院での治療費の支払いが気になるところだが、領収書などを保持していれば、後から請求できるという。また、相手が未成年の場合には、その支払い能力に疑問を持つ人も多いと思うが、その(8)保護者に責任を負ってもらうことになる。なので、加害相手が未成年の場合には、親の連絡先を確認しておくべきである。同じことは、会社にも言える。もし、(8)加害者が業務中に起こした事故であれば、企業に責任を負わせることが可能なのだ。ただし、被害者が完全に悪いという例は、実はそう多くはないという。実際、歩行・運転する際に、交通ルールを完全に順守していると自信を持って答えられる人は、どれだけいるだろうか。被害者に落ち度がある場合、その分だけ加害者の過失割合を少なくすることができる(=「過失相殺」)ため、加害者は救護措置などと同時に、(9)被害者の落ち度を証拠として押さえておくのが肝要だ。目撃者の証言はもちろん、最近は車載カメラが珍しくないので、相手の信号無視や、よそ見を映像として残すことができる。

 最後に、見逃されがちなのが、同乗者のケガの責任だ。誰かの車に乗せてもらって送ってもらうのはいいものの、その際に事故、ケガを負ってしまった場合、どうすればいいのだろうか。「(10)同乗者のケガも、賠償責任は運転手が負うことになります。無償で送ってあげていたとしてもです。ただし、同乗者が“急いで”と速度超過を要求したり、ドライブ中にふざけ合ってて事故を誘因した場合などには、その限りではありません」(同)——もちろん、事故に遭わないことを最優先にすべきだが、もし、万が一の場合には、ぜひ参考にしていただきたい。

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