すでに差がつきつつある巨人・阪神の“伝統の一戦”だが、その違いは秋季キャンプでも見られた。11月10日、由伸監督は内海哲也らを相手に初ノックを披露。新監督がバットを握る盛り上がる場面だったが、練習後、「人手が足りないから、やらざるをえなかった」と、あまりに素っ気ないひと言。番記者たちの胸中やいかに……。

 一方の阪神。11月23日、2500人が集まったキャンプ地の安芸市市営球場に、こんな声が響き渡った。「おはようございます。新監督に就任しました金本知憲です。明日、紅白戦を予定していましたが、たくさんお客さんが来られているので、今日やります」 同日が祝日で、多くのファンが集まったのを見て「実戦が見たいかなと思った」と紅白戦を前倒し。自らがアナウンスし、喝采を浴びたのである。

「カネモッちゃんは監督になってから、ようしゃべるようになった。人当たりもようなったしな」と、金本監督をよく知る野球関係者が語るように、現役時代とは違った一面を発揮している“アニキ”。「選手のときは下手な質問をしようものなら、“もっと勉強してこいや”と言わんばかりに睨まれましたが、今は何でも答えてくれる」と、阪神担当記者が語るように、そのコメントは自由自在だ。

 エース・藤浪晋太郎について「スーパーエースになってほしい。野手でいえば、3割30本ではなく、3割5分、50本ぐらいの打者になってほしい」と独特の言い回しで期待を述べたかと思えば、警戒するチームを問われ、「優勝したヤクルト。まずドラフトでヤクルトをやっつけたのでね」と、明大・髙山俊の1位指名のクジ引きをめぐる前代未聞のハプニングを蒸し返す。さらに「若い選手は契約金で派手な車に乗るけど身の丈に合ってない。(自分は)初めて3割打つまで国産車に乗ってました」と、引き締めることも忘れない。

 サンケイスポーツは11月9日、練習前に報道陣と林道を散歩する由伸監督の写真に<金本監督に負けじと、ユニークなネタの提供をお願いします!!>とのキャプションをつけた。これはまさに、番記者の魂の叫びと呼ぶべきではないだろうか……。

 前出の江尻氏が言う。「現役時代の長嶋さんは、プロは書かれてナンボ、というスタンスで、記事になるリップサービスをいろいろしてくれた。金本監督も同じようなタイプだと思います」 さらに続けて、「でも、それもキャラクターですよ。巨人の藤田元司監督は“勝てばいいんだ”と、マスコミにサービスはまったくしなかった。それでも徹底的に選手を守ったから信頼は厚く、藤田監督の悪口を言う選手はいなかったし、結果を出した。金本監督は“長嶋型”、高橋監督は“藤田型”かもしれませんね」

 球界を代表する名門チームを率いることになった両者だが、お互いに対する評価はどうなのか。11月8日のCS日テレジータスの番組で、由伸監督は金本監督へのライバル意識をむき出しにした。「(金本監督から)雰囲気を学ばないといけない。グラウンドで戦ってきた相手と戦う。まだ想像はつかないけれど、負けないようにしたい」

 一方の金本監督も10月30日、テレビ大阪の番組で由伸監督を意識するのかと問われ、「多少、しますね。新人監督同士ですし、まあジャイアンツですし」「見ての通りの男前で、さわやか。僕とは対極にいる感じの好青年です」と、静かに闘志を見せている。奇しくも同じ4月3日に生まれ、同じ右投げ左打ちの外野手として、しのぎを削った両者が、再び新監督同士として相まみえる。運命の2016年シーズンは、すでに始まっている。

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