住んでからも、大変なことは多いという。前出の市橋氏も、田舎暮らしのスタートは古民家だったそうで(その後、2度の引っ越しをしている)、「“(2)住宅維持費用が、バカにならない”んです。クーラーがなかったので、夏は室温が40度を超えましたし、冬は隙間風がハンパなく、暖房効率も悪いので、灯油代がかかりますよね。ちなみに、その古民家では、お風呂も灯油ボイラーで沸かしていました。何より冬は水道管の凍結による破裂を防ぐための“水抜き”という作業が必要なんですが、古民家は広くて蛇口の数が多く、毎晩、結構な作業でしたね」

 また、農作業に関しても、「“(3)農作業はめちゃくちゃ大変”です。OLが都会のベランダでやっている“プランター農園”の延長のつもりでいたら、大変なことになりますよ」と、市橋さん。「ヤバいのは雑草の繁殖力。せっかく開墾したのに、たった数日で、また雑草だらけ。無農薬野菜を作ろうなんてのも、素人じゃ無理です。“全部の葉っぱに虫ついてんじゃん!”みたいなことになりますから」

 また、市橋さんは農作業中にブヨに刺されて足がパンパンに膨れあがったり、スズメバチとの遭遇も珍しいことではないという。「“(4)動物や虫がたくさんいて大変”。動物なら、サル、シカ、イノシシ、タヌキ、ハクビシン。マムシもいましたし、カラス、キジをはじめとするいろんな鳥などによる被害も当たり前で、最初は対策に追われることになるでしょうね」なるほど、田舎暮らしに思い描きがちな“ゆっくりと流れる時間”を味わう余裕など、なさそうだ。

 そして、“(5)地方独特の人づきあいの在り方が本当に大変”だという。「基本的に皆さん、とても優しく、いい人なんです。ただ、地方には“絶対に怒らせてはいけない地元の主”みたいな人がたまにいて、その人に嫌われちゃうと、とてもやっていけません。私が最初に住んだ古民家の大家さんが、まさにそういう人で、傷んだ個所の修繕について問い合わせたことをきっかけに、修復できないほどに関係性が悪化してしまい、退去を余儀なくされました」(市橋さん)

 “地元の主”とまでいかずとも、地方の大家さんの中には、移住者に対し「貸してやっている」という意識の人も少なくないようで、一度ヘソを曲げられると、「都会もんには分からないんだ。出てってもらって構わない」と、以降こちらの話には一切耳を貸してくれなくなるというのも“移住者あるある”だという。「当たり前のことではありますが、大事なのは“ご挨拶”であることを、改めて実感しました」(市橋さん)

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