それだけではない。緊急時に行政の対応は遅くなってしまいがちなので、普段から地域の夏祭りや盆踊り、伝統芸能の練習やBBQ会、集落にある神社の合社の作業などにも積極的に参加し、地元の皆さんとの交流に努めているという。「全部に参加するのは大変だし、もともと人数が少ないので分担する役割は結構多かったりするんですが、出ていけば皆さん喜んでくれて、可愛がってもらえるということが分かってきましたね」(市橋さん)

 11年に高知県に移住し、『まだ東京で消耗してるの?』で高知の魅力を発信するプロブロガー・イケダハヤトさんも、「地方には様々な特色があって、住んでいる人のノリも東京とは違いますから、まずは自分に合った地域を選ぶことが、重要でしょうね」と言う。「いきなり移住して自分に合わない場所だった、なんてことになったら大変なので、一度、その地域の都市部で生活をしてみて、ここなら大丈夫そうだという手応えをつかんでから、より深い地域に移住先を見つける。僕も行った“二段階移住”がオススメです」

 東京暮らしでは考えられない、地域の風習や習わしに戸惑うこともあるという。前出の中山氏が、こう語るのだ。「よくあるのが、“(6)様々な名目での集金”です。自治会費に、入村料(公民館負担金という場合も)、交通安全費、地域の神社への寄付など。年間にすると、4~20万円にも及び、結構な負担になるんです。しかも、徴収はすべて訪問集金。断ろうとするものなら“それなら、ゴミ捨て場を使わせないよ”といったことを言いだす。役場に訴えても、結局は“地域の人とうまくやってください”と言われて、どうにもならないことが多いようです」

 何より、“(7)仕事、収入をいかに確保するか”という大きな問題もある。「都会のような仕事はありませんが、実は田舎には田舎の仕事がけっこうあるんです。役場の職員、町おこし協力隊、農業や林業、事業継承などで、1つでは無理ですが、毎月3万円を5か所からもらうくらいの気持ちでいれば、物価も安いので生活は成り立ちます。ただし、行動力は都会暮らし以上に必要になってくるでしょう」(イケダさん)

 ライバルの少ない地方では、アイデア次第で起業のチャンスはいくらでもあるという見方もあるが、「仕事は自分で作るもの、という起業家精神がある人。地方の可能性にワクワクできる人じゃないと、難しいかもしれません」(前同) その道に詳しい3人が警鐘を鳴らす憧れのスローライフ。今まで挙がった“田舎で暮らしてはいけない7つの理由”を参考に、地方で何をしたいのか、果たして自分は田舎暮らしに向いているのか――地方移住に憧れている人は、もう一度よく考えてから、行動に移したほうがよさそうだ。

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