15年シーズン、東北楽天で騒動が勃発した。三木谷浩史オーナーが露骨な「現場介入」を繰り返したことに激怒した田代富雄コーチが、突如、辞表を叩きつけ、最終的には大久保博元監督の辞任にもつながった。

 川藤氏が持論を述べる。「昔、大映のオーナーだった永田雅一さんなんかは、現場に口を出しまくってたわな。自分の私財を投げ打ってオーナーになった人が、チームに介入したくなるのも無理はないと、わしゃ思う。ただ、野球の素人やということをわきまえんといかん。監督を任命したのは自分なんやから、その任命責任ちゅうのもあるわな。トップには“チームはこいつに任せる”という眼力が必要なんや。金は出すけど、口は出さん、その代わり選手、監督を信頼して、“よっしゃ、このオーナーを胴上げしてやろう”と思わせるのが、ええオーナーや。孫さんみたいにな」

 黒江氏は自らのコーチ時代の経験を語ってくれた。「かつて、ある球団では球団社長が選手と直接会食したり、メールや電話でやり取りしてたことがあるんだよ。契約更改が終わった選手に、球団社長が“年俸上げてもらったのか?”と聞き、選手が“こういう金額になりました”と言うと、“なんだ、俺んとこに直接来れば、もう少し上げてやったのに”なんて言う。当時コーチだった私は“監督やコーチの頭越しに選手と話すのはやめてくれ”と言ったら“俺はファンなんだよ”と悪びれない。こういうチームは強くならないよ」

 江本氏は、球団社長や代表が本社から天下って急に権力を持つ、これまでの球界の体質が「フロントの現場介入」を招くと分析する。「昨日までのサラリーマンやってた人が、急に新聞記者に囲まれて自分が偉くなったように勘違いしちゃうんだね。GMなんて言ってるけど、日本にほんとの意味でのGMなんか一人もいない。落合? あいつは、ただの(中日)OB。選手の年俸をカットするのはGMの仕事じゃない。むしろ、球団から金を引き出して強いチームを作り上げるのが本来の仕事なんだよ」

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