脳梗塞、心筋梗塞――いつ訪れるか分からぬ“悪夢”に怯えて暮らすのはまっぴら。最悪の事態を回避せよッ!!
昨年末に埼玉県北本市の公園では、梅の花が暖冬の影響で一足早く開花。正月になっても東日本を中心に記録的な暖冬が続いている。だが、これに油断して寒さ対策をおろそかにすると、春の桜を病院の窓やお墓の下から見ることにもなりかねない。「実は、12月、1月、2月は、家の風呂場などで突然死するケースが非常に多くなるのです」 こう警告するのは、内科、循環器科の専門医でもある石蔵文信・大阪樟蔭女子大学教授だ。その原因の多くは“ヒートショック”。室温の急激な変化による血圧の大きな変動がもたらす健康被害のことだ。
暖かい居間から寒い脱衣所に行って服を脱ぎ、いきなり熱い湯船にざぶんと飛び込む――。こんな寒暖の差がヒートショックを引き起こし、文字通り命取りになるという。「寒暖の差で血圧が急激に上下して、心臓や脳血管に大きな負担がかかります。これが心筋梗塞や脳梗塞の引き金になってしまうんです」(石蔵教授)
ちなみに、東京都健康長寿医療センター研究所の調査では、2011年の1年間で入浴中のヒートショックによって死亡するケースは年間約1万7000人と推計。これは交通事故死亡者数(5000人弱)の3倍を超える。浴室で突然死するのは60歳以上の中高年に多いのだが、それ以下の年代も決して油断できない。疲れやストレスがたまって体力が低下していると、若くてもヒートショック死の危険があるからだ。メーカー勤務のTさん(49)も残業続きで疲れていた昨年の冬、帰らぬ人になるところだったという。「酒を飲んで家に帰り、風呂に入っていると、急に心臓がバクバクして、胸を締めつけられるような激痛が走ったんです。なんとか浴槽から這い出し、風呂場のガラス戸を叩いて女房に助けを求め、救急車を呼んでもらったんですが、あと30分遅れたら危なかったそうです」 そもそもヒートショックは、どのようにして起こるのか? 簡単に説明しよう。