「一番風呂が好きな方も少なくないんですが、なるべく避けたほうが無難です。一番風呂は脱衣所や浴室が温まっていないため、温度差が大きいんです」(前出の石蔵教授) また、肌にピリッとするような熱すぎる風呂も危ない。前述のように、熱いお湯は血圧を上げてしまうからだ。冬場は風呂の温度をやや低めに設定して、あまり長く入らないことがポイントになる。

 冒頭で紹介したTさんのケースのように、酒を飲んだ後の入浴もヒートショックの危険を高める。「アルコールは脱水症状を引き起こすため、血液がドロドロになっています。この状態で風呂に入ると、脳梗塞などを引き起こしやすいんです」(前同)

 体調が悪いときも無理をせず、入浴をやめるようにしたい。食後すぐの入浴も避けたほうがいいようだ。「食後は血液が消化器に集まっています。この状態で風呂に入ると、脳への血流が少なくなり、貧血を起こしやすくなるんです」(同)

 自分の体調や体の状態を考えて風呂に入ることも大切だが、最も効果的なのは、入浴前に脱衣所や風呂場をよく温めておくことだろう。実は、入浴中の突然死が少ないのは沖縄と北海道だという。暖かい沖縄はともかく、北海道で事故が少ないのは家全体に暖房がきき、脱衣所や浴室まで温めているからだ。浴室や脱衣所にヒーターを入れる。そこまでできない場合は、入浴前に浴槽のふたを開けて、浴室をしっかり温めるなどの工夫が必要だろう。

 血圧が高い人の中には血圧降下剤を飲んでいる方もいるだろうが、これも注意が必要だ。医師は、冬場になると寒くて血圧が上がりやすくなることもあり、やや強めの薬を処方する。「血圧降下剤で血圧が下がっているところに、長湯で体を温めて血圧がさらに低くなってしまうんです。これが原因で、低血圧による貧血や失神を招いてしまうことがあるからです」(同)

 なお、ヒートショックは風呂場だけでなく、トイレでも起こる。「寒いトイレで血圧が高くなったところに排便しようときばるため、なおさら血圧が高くなる。トイレ用の暖房機をつけたり、きばらないで排便できる食生活や運動をすることが大切です」(前出の渡會院長) 意外に知られていないが、冬場、乾燥した暖かい部屋にずっといると、水分不足になる。血中の水分も不足しがちで、血液がねばねばになってしまう。これが原因で脳梗塞などを引き起こすこともあるという。冬もしっかり水分補給を心掛けることが大切だ。前の日まで元気だったのに「家でぽっくり」なんてことがないよう、くれぐれも家の中の温度差にはご注意ください!

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