秘書に政治資金規正法違反容疑がかかる一方、それより深刻なのは、甘利氏が大臣室で受け取った現金の性質。これが口利きへの報酬なら、あっせん利得罪にあたる。事実、URに東京地検特捜部から事情聴取の要請があったようだ。「特捜部は報酬を見返りとした違法な口利きがなかったかなどを見極めるため、慎重に事実関係を確認するとみられています」(前同)

 当然、野党もすんなり矛を収めるはずはない。「数の力で、民主党による甘利氏の参考人・証人喚問は否決されるでしょうが、国会外で野党の調査チームが建設会社の総務担当者を招聘し、説明を求めることはできます。そこでダーティな部分が明らかになれば、甘利氏は安倍政権発足以来の重要閣僚だけに、政権の屋台骨が大きく揺らぎますよ」(同)

 その甘利氏の後任人事も、安倍政権の火ダネの一つ。政治評論家の浅川博忠氏がこう語る。「石原氏は、前回の安倍内閣で政調会長を経験した間柄。今回の石原氏の起用により、5~7回生の大臣待望組からは、“やはり友達でないと大臣になれないのか”という失意と同時に不満が広がっています」 のみならず、石原氏の過去の言動も“倒閣”の材料になりかねない。「福島第一原発をオウム真理教の施設にたとえ、“福島第一サティアン”と語った失言癖に加え、公務中のスキューバダイビング、大臣室での飲酒、委員会への遅刻など。石原氏の失言や失態で重要閣僚が連続辞任という事態になれば、世論も黙っていないでしょうね」(政治部デスク)

 というように、支持率は高水準を保っている安倍政権だが、一皮めくれば、炸裂寸前のスキャンダル爆弾と、石原氏という火ダネを抱えているのだ。「甘利ショックをきっかけに、“一強独裁”の潮目が変わる」(自民党の非主流派関係者)と言われる通り、“ポスト安倍”を巡って党内外の動きも急展開してきた。そのキーとなるのが、“次”を狙う7人衆だ。その筆頭は、派閥活動を再開させた石破氏だが、外務大臣の在職日数が戦後歴代4位に並んだ岸田文雄氏も、意欲をのぞかせる。「岸田さんはそもそも、タカ派の安倍首相とは政治理念を異とするリベラル派の伝統派閥・宏池会のリーダーです。派閥の会合では、“憲法9条自体は改正することを考えない”と、改憲が悲願の安倍首相と正反対の発言をしているだけに、このまま改憲に突っ走る安倍首相に対して心中穏やかではないでしょうね」(前同)

 その宏池会は、昨年の総裁選では、名誉会長である古賀誠元自民党幹事長が野田聖子氏を担ぎ出し、出馬寸前までいったという過去もある。「政権の支持率が40%前後となれば、野田、岸田という党内、閣内のポストを待ちながらも非主流であるリベラル派が、“安倍降ろし”に動き出す可能性はあります」(前出の浅川氏)

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