では、マイナス金利政策の失敗が引き起こす事態が庶民生活に、どのように影響するのだろうか。「三井住友銀行は、16日から普通預金の金利を過去最低に並ぶ0.001%へ引き下げました」(前同)

 本来であれば、庶民の預金の金利は無関係のはずだが、「同行では同時に、住宅ローン金利も0.9%へ引き下げました。大手3銀行で初めての措置です」(同) 住宅ローンが下がれば、住宅を買いやすくなる。庶民生活にとっては一見プラスのように見えるが、やはり、“劇薬”の副作用はすさまじい。「マイナス金利を実施しているスイスでは、住宅ローンの金利が逆に上がっています」(外資系銀行員)

 なぜ、そんな逆転現象が起きるのか。「それは、マイナス金利によって銀行の収益が圧迫されるからです」(前同) つまり、銀行側は、増大したコストの一部を借り手に転化するため、住宅ローンの金利を引き上げているのだ。「日本でもマイナス金利が長期化すれば、銀行がなんとかお金を稼ごうと、預金口座維持名目で手数料を取ることになるかもしれません。もちろん、これまでの振込手数料などを値上げしてくるのは確実です」(フィナンシャルプランナー)

 将来、確実に“預金金利ゼロ”時代がやって来るとして、労働問題に詳しい政治学者の五十嵐仁・元法政大学教授が、こう続ける。「3月の日銀の政策決定会合で、マイナス幅を拡大するという見方があります。これは、預金しても利子がつかないことを決定づけるものです」 住宅ローンが上がる一方、預金金利はゼロ。銀行の各種手数料も上がり、庶民の暮らしはますます苦しくなる一方だが、それより恐ろしいことがあるという。「マイナス金利は、特に地方銀行や信用金庫などの経営を圧迫します。そうなると、背に腹は代えられず、中小企業へ貸し付けていた融資の返却を迫り、貸し剥がしが起きてきます。そうして中小企業の経営は悪化し、倒産が増えるでしょう。同時に、貸し剥がししても経営を立て直せない銀行そのものが、倒産することも考えられます」(前同)

 事実、欧州中央銀行(ECB)のマイナス金利導入によって信用不安の嵐が吹き荒れる欧州諸国を見れば、「マイナス金利の弊害が、こうした信用不安の広がりにあることは明らか」(同)なのだ。中小企業の倒産ラッシュに、信用不安による金融機関の破綻。日本経済は最悪だった時代へ逆戻り――。まさに、アベノミクスの大崩壊は待ったなしなのだ。「企業がその流れを予測し、この春の賃上げどころか、夏のボーナスを減額することも考えられます。労働者にとっては、怒りを爆発させたくなる憤激の事態でしょう」(全国紙経済部記者)

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