ビートたけし「失礼な若手がいっぱいいる」発言の真意とはの画像
ビートたけし「失礼な若手がいっぱいいる」発言の真意とはの画像

 舞台、テレビではやりたい放題。映画でも型破りな作品を作り続ける破天荒な男のコメントの裏にあるものとは?

「たけしさんの発言は、今のお笑い界、いや社会全体に対する苦言だと思います」(民放局ディレクター) 世界のキタノこと、ビートたけし(69)が久しぶりに吠えた。それは、5月8日の『ビートたけしのTVタックル』(テレビ朝日系)でのこと。放送終了間近に彼は、「失礼な若手がいっぱい出てきている」と苦虫を噛み潰したような顔で語り始めたのだ。「たけしさんに言わせると、最近の若手芸人はお笑い養成所などの“学校”で学んでから、芸能界入りするタイプが増えた。結果、従来の師匠と弟子の師弟関係がなくなり、売れたもん勝ち。後輩であっても、売れていない先輩には挨拶もしない。この現状を嘆いているようでした」(前同)

 確かに、先輩に対する礼儀の重要性は理解できる。だが、たけしといえば、若い頃から言わずと知れたハチャメチャ破天荒な芸人。「ツービートを結成したての頃は、泥酔して舞台に上がるわ、客席の客とケンカするわ。でも、そんなのマシで、仕事に来ないこともしょっちゅう。礼儀とは無縁の人でした」(芸能記者)

 今年2月の東スポ映画祭でも、綾瀬はるかなど一流女優陣を従えてコマネチをかますなど、永遠の悪ガキであるたけしが今さら、若手の礼儀をどうこう言うのは違和感があるが、古くから彼を知るお笑い関係者はこう語る。「確かに、たけしさんはハチャメチャ。ただ、自分勝手に好き放題やってきたわけではない。どんな大物になっても先輩への挨拶は忘れず、また後輩であれ、自分に非があれば素直に認めて謝罪する。締めるところはキッチリ締める、大人の礼儀をわきまえた人です」

 年齢とともに偉そうに振る舞うオヤジ、若いヤツに対して二言目には、「俺らの若い頃は……」と武勇伝を語りたがるオヤジ。それでいて、自分のミスは絶対認めない頑固オヤジ……皆さんは大丈夫だろうか。そこで今回、本誌はビートたけし流の「オヤジ世代が見習いたい礼儀作法」を取材。ハチャメチャな生き方の裏に隠された一流の教訓を、ここに紹介しよう。

 まずは、こんな逸話。「プロインタビュアーの吉田豪氏が昨年12月に『TVタックル』にゲスト出演したときのこと。たけしさんは収録前、吉田氏にツカツカと急接近。顔を10センチにまで近づけて、“お前、よく俺の番組に出てこれたな!”と恫喝したんです」(バラエティ番組関係者)

 ブチ切れた理由は、吉田氏が週刊誌で、たけしの悪口を書いたからだという。「ところがこれ、たけしさんの勘違い。どうやら別のライターが書いたもののようだったみたいで」(前同) そのことに気づいたたけしは番組収録中、すぐさま吉田氏に謝罪。収録後にも改めて謝罪し、さらに後日、吉田氏と親しい弟子を通して再度の謝罪。だが、それでも“すまない”という念はやまなかったようで、「たけしさんは吉田氏に、A4紙3枚ほどの謝罪文を送ったんです」(同)

 たけしの恫喝を受けて、氷のように固まっていた吉田氏を思ってのことだろうが、たけしほどの大物が、これが実際にできるかといえば、なかなかできることではないのではないか。「謝罪文でも誠意を見せようと必死だったようです。<鬼神の如き表情であなたを追い詰めてしまったことを深くお詫びいたします>と懸命に謝ったそう」(同)

 男たるもの、自分が悪ければプライドもかなぐり捨てて詫びる。これが、たけし流の礼儀なのだ。その一方で、ミスをした者への対応がまたすごい。「少し昔の話ですが、たけし軍団でコンサートを開いたことがあったんです。そのとき、ガダルカナルタカとダンカンが2時間も遅刻したそうで……」(前出のお笑い関係者)

 2人は「もう、このまま軍団も芸能界も辞めよう」とまで思い詰め、生きた心地もしないまま、会場に着いたという。するとたけしは2人に対して、ひと言。「もういいよ。お前ら、ここに来るまで相当怖ろしい思いを抱いて来たんだろ? だから、もういいよ」と2人をまったく咎めることなく、許したという。「失態した時点で、本人たちが一番反省していることを、たけしさんは分かっている。それは誰よりも、自分の弟子のことを信じている証です」(前同)

 たけしのこうした精神は、「あの人の影響が大きい」と語るのは、ツービートの相方、ビートきよし氏だ。「相方と僕は深見師匠の下で育ってきました。相方の礼儀作法は、師匠を見て、学んだものだと思います」

 72年、フランス座にエレベーターボーイとして潜り込んだたけしは、当時、浅草芸人のカリスマ的存在だった深見千三郎氏に仕え、芸のイロハを学んだ。たとえば、たけしが深見氏に、浅草の鍋屋に連れていってもらった際のこと。「料理を食い終えた後、相方は先に座敷を下りて、師匠の靴を出すワケです。すると、店を出てから師匠は“タケ、お前はバカか”と言うんです」(前同)

 たけしは何かミスをしたのかと思いきや、「師匠曰く、『靴置き場にはピンクのハイヒールがあった。それを俺に履かせれば、“お、背が高くなったって、バカヤロー! 俺の靴じゃないだろ”って言える。そしたら周りから“深見のところには面白い弟子がいるな”と名前を覚えてもらえるだろう』と(笑)」(同) これぞ、本当の“粋な師弟関係”ではないだろうか。

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