プロ入り後は、特に投手としての評価を高めてきた大谷だが、もともと彼のバッティングセンスは、高く評価されていた。「“日本人で僕のホームラン記録を抜くとしたら大谷だろう”と、あの王貞治が周囲に漏らしていた話を聞いたことがあります。王さんが入団当時から認めるほど、大谷の打撃は高いレベルにありました」(ベテラン記者)

 そのバッティングセンスが、まさに今年“開眼”したわけだが、その理由は何だろうか。かねてから大谷の二刀流挑戦を肯定し続けてきた前出の里崎氏は、その要因を、「オフに取り組んだ、トレーニングの成果ではないか」と分析している。

 大谷は、米レンジャーズのダルビッシュ有に触発され、昨年11月中旬から1日7食の食生活と筋力トレーニングを組み合わせた、肉体改造を敢行したといわれている。それによって体重と筋肉量の増加を図った結果が、打撃面でのパワーアップにつながったというわけだ。

 これで二刀流の完成と言いたいところだが、気がかりな点がないわけではない。打撃が絶好調である反面、投手としては、後半戦に一度もマウンドに立っていないのだ。大谷が投げなくなったのは、あるアクシデントがきっかけだった。

 7月10日のロッテ戦で大谷は試合中、突如降板。その理由が「右手中指のマメがつぶれた」ということだった。その後、大谷は7月24日のオリックス戦に中継ぎで登板しただけ。

「日ハムサイドの公式的な見解は“現状の打線の状態では、(打者としての)大谷は外せない”というものなんです。確かに、これだけ打っていれば、外せないのも分かります。今の日ハム打線で好調なのは、大谷を除くと西川遥輝くらい。優勝が見えてきたこの時期に主軸は外せませんよね」(前出のスポーツ紙デスク)

 だが、それだけでは納得することはできない。「一部では、どこか大きな故障をしているんじゃないかという噂も飛び交い始めました」(前同) 野球解説者の江本孟紀氏も、こう言う。「マメが理由で、ここまで投手復帰が長引くのはおかしいです。何か他に理由があるとしか思えません」

 さらには、その心配を煽るような事実もある。「どうやら大谷の状態については、球団内でも機密事項になっているようなんです」(全国紙野球担当記者) スポーツ紙などでは、札幌ドームのブルペンで、試合前に投球練習をして50球投げ込んだ、などと報じられているが、「栗山監督と吉井コーチ以外はシャットアウトされてしまうので、我々は監督やコーチのコメントで大谷の状態を推測するしかない。正確な大谷の状態がまったく伝わってこないんです」(前同)

 まさか、投げられない状態なのか? しかし一方では、こんな話も。「大谷が遠投しているシーンも目撃したこともあります。おそらく故障じゃないでしょう。少なくとも投げられない状態ではない」(前出のベテラン記者)

 ならばなぜ? 他の理由とは何か……。「大谷のピッチングフォームが、少しバランスを崩してきたので、その修正に少し時間がかかっているんじゃないかな。今のところ最後の登板となっている7月24日のオリックス戦では、素人目に見ても、明らかにフォームがおかしかった」(前同)

 この日、大谷は結果的にオリックス打線を無失点に抑えたものの、ヒットと四球でピンチを招き、1イニングで降板している。「しばらくは打者として使いつつ、フォームを修正して、完全に復活するまで手の内は見せないというのが、打倒・ソフトバンクのための日ハム首脳陣の考えなんでしょう」(同)

 また他方では、大谷に“打”の勲章として、なんらかのタイトルを獲らせたいという気持ちが首脳陣にあるのではないかと推測する向きもある。まずは、前述の月間MVP。投打で受賞となれば、史上初の快挙だ。「目下、月間MVPの最右翼は西武の浅村栄斗ですが、ホームランでは大谷の5本がトップ。さらに本数を伸ばして打点でもトップになれば、受賞の可能性も高くなるでしょう」(スポーツ紙デスク)

 ならば8月は打者に専念するというのも、ありえる話だ。そして、さらには、こんな夢のような話まで浮上してきている。「大谷が今シーズンの残り試合すべてに打者として出場しても、シーズン410打席程度と規定打席443には届きませんが、野球規則には首位打者の規定打席に関する例外規定があるんです」(スポーツ紙デスク)

 それは、規定打席に満たない打者の場合、不足分の打席を凡打として加算。算出された打率が規定打席到達者の打率1位を上回れば、規定打席未到達でも首位打者と認定される、というもの。場合によっては、両リーグ初の“例外規定”の適用で、大谷が首位打者を獲得する可能性があるのだ。

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