Y でも、体といえば、やっぱり長渕さんでしょ。
N 剛はデビュー時はガリガリで、病気でツアーが中止になるくらい体が弱かったんですが、演技で殺陣を学んだのをきっかけに筋肉をつけていくんです。そして今や、「腹が出てる奴はオレのバンドにはいらない」と言うほど、精神的にもムキムキに。
Y 「強くなりたい」という強烈な意志を感じますよね。
N 永ちゃんとは違う形ですが、その姿に、我々ファンも啓発されるんです。僕は、剛のライブのことを“稽古”だと思っていて。
Y えっ?
N ライブ中、拳を1000回も2000回も天に突き上げるんです。最近は普通の会場でも3時間のステージは当たり前だし、それこそ桜島で夜通し(※1)とか、富士山麓(※2)のような過酷な環境の中でも、ずっと拳を突き上げ続ける。そうなると、ファンもライブについていくために体調を整えて、筋トレをしたりして臨むじゃないですか。
Y じゃないですかって、知りませんよ(笑)。
N (真剣)結果として、ライブを乗り越えた僕らは「俺、ここまでやれるんだ!」という強烈な達成感を得るんです。だから、その後の生活でどんなに辛いことがあっても耐えられる。
Y なるほど! 肉体の苦痛を経て、結果的にファンは勇気をもらうんですね。
N 剛自身が、ライブ中に心拍数200に達したりするほど激しいパフォーマンスをしますからね。
Y 永ちゃんはそこまでハードではないけど、ひとつ特徴があって。ライブのお客さんに、中小企業の社長っぽい方がたくさんいるんです。ヤンチャな頃に『成りあがり』(※3)を読んで「永ちゃんも頑張ってるんだから、オレもやんなきゃ」と思って一国一城の主を志したような人たち。
N へぇ~!
Y そういう地元の自営業者的な方々が、年に一度のライブのために残り364日を汗水流して働いて、当日はバリッと白スーツで決めてくる。例えるなら浅草の三社祭のような、大事な年中行事という感じですね。僕も、1年しんどくても秋口になると「もうすぐ12月で永ちゃんのライブだから、あと少し頑張ろう」と希望が湧くんですよ(笑)。
N いい話だ……。僕が聴き始めた頃の剛は、ファンの9割が男性でした。でも、最近は特に若い女性のファンが増えて、今では男女比は半々くらいですかね。
Y そうなんですか!?
N 「長渕=いかつくて取っつきにくい」というイメージが強いですが、実はライブのMCなどはすごく饒舌だし、冗談もうまくてチャーミングなんです。最近は少しテレビに出るようにもなって、そういう部分が浸透したんじゃないかな。