普段、自分が飲んでいる薬を思い浮かべていただきたい。その薬が、どのような副作用を持ち、自分の体にどんな影響を与えているか、それを知らないことで、生命を危険にさらしているかもしれないのだ。特に中高年層は、体調不安が多いゆえに医薬品に頼る部分が大きい。さらに、加齢による体の変化ゆえの服用時の注意点もある。

 高齢者は、若年層に比べて体内水分量が少なくなり、さらに、体脂肪の量が増える傾向があるという。また、薬を体内に取り入れる際に重要な働きをする肝臓や腎臓の機能も低下している。これらの影響で、薬が強く作用したり、あるいは、体内に想定よりも長い時間蓄積することで、副作用が発生しやすくなるというのだ。

 そのため、高齢者への処方時には年齢を目安にして、通常の成人の3分の1から3分の2ほどに量を減らすことが一般的だというのである。逆に言えば、ずっと飲み続けている薬だからといって、用量が長年、そのままでいいということにはならないということだ。

 では、そんな中高年層にとって身近な医薬品の危険性について、同書に紹介されている中から、ごく一部ではあるが紹介しよう。高血圧の薬として、よく用いられる医薬品の一つ、「アムロジピン」。これは、血管を広げる効果を1日1回の投与で持続できるため、さらに、ジェネリック医薬品ゆえに安価ということで、世界中で使用されている。ちなみに、これは高血圧以外にも、狭心症の治療薬としても処方されている。

 多くの人にとって身近な医薬品なのだが、実は“劇症肝炎”という危険な副作用を抱えているのだ。実際、今年1月にはアムロジピンの投与を受けていた2人が死亡し、そのうち1人が、その副作用で死亡した可能性が否定できないと、厚労省が発表している。

「この事例の発覚後、厚労省はアムロジピンの『重大な副作用』の項目に、劇症肝炎を追加するよう求めました。適切な治療をしなければ、すでに起きた事例同様に死に至る確率が高いので、服用時には変調を感じたら、すぐに医師に相談すべきです」(医療記者)

 副作用の初期症状としては、発熱や食欲不振といった風邪と間違いやすいものが多く、気づきにくいのがネックと言えるが、副作用がさらに進行すると尿の色が濃くなったり、あるいは白目部分の色が黄色になるという。服用する際は注意しておきたい。

 同じく高血圧・狭心症の薬に「ニフェジピン」があるが、この副作用には、血圧低下や呼吸困難、貧血のほか、意識の薄れや判断力の低下もある。車の運転をする際などには注意したい。

 また、不整脈でよく用いられる「アテロノール」や「プロプラノロール」(狭心症にも)には、高齢者の場合、心不全という副作用が現れやすく、糖尿病薬の副作用を強める恐れもあるので、少量から開始する必要があるだろう。

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