そもそも大谷は、高校卒業後すぐに「直接メジャー行き」を目指していた。それを翻意させるため、ドラフト指名した日ハムが提示したのが「5年でメジャー移籍容認」の手形と「二刀流」だった。また、「米国でマイナーから始めるよりも早くメジャー選手になれる」という口説き文句もあった。そして大谷は、日ハムが獲得のための方便で打ち出した“二刀流”にハマり、これを続けることを強く望むようになっている。

 実は、メジャーの新しい労使協定は、かえって米国でのその道を開いたとも言えるという。メジャーでは、選手のケガのリスク回避のため、保険に入るのが一般的。高額な選手ほど、それは必須条件だ。二刀流は、これまでに例のない起用法だけに、保険会社が加入を認めない、あるいは保険料が莫大になることもありうるのだという。

 そんな事情もあって、メジャー球団は二刀流に二の足を踏んでいたが、ここにきて状況が変わった。大谷は年俸も、それに伴う保険料も安い“おトクな選手”として海を渡ることになる。そうなれば、用意すべき金額が下がったことで、手を挙げる球団も増えることは確実だろう。中には、“獲得の決め手”として“二刀流起用”を確約するチームも出てくるかもしれない。

 実際、何人かのメジャースカウトは、「投打どちらでも通用する」と明言しているし、実際、数球団で二刀流起用のシミュレーションをしているともいう。「大谷クラスの投手は、なかなかいませんが、大谷クラスの打者なら、メジャーには掃いて捨てるほどいます。やはりメジャーが欲しがるのは投手・大谷でしょう」と前置きしながら、福島氏は、こう続ける。

「アメリカンフットボールのNFLと長期間兼業したかつてのメジャーリーガーのディオン・サンダースのように、誰にもできないことをやり抜くスーパースターを待ち望む傾向がアメリカには常にあります。高いレベルで、投手と打者を兼業することができれば、大谷はベーブ・ルース以来のスーパーヒーローになれるかもしれません」

 来オフの渡米で、あえて苦難の道を歩もうとする大谷。前人未踏の道なき道を進み、誰にも到達しえない高みに登ってほしいものだ。これまでも球界の常識を覆し続けてきたこの男の活躍が、今から目に浮かぶ!

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