12月9日には、都内の駅でスリを繰り返した中国籍の男ら3人が逮捕されたが、これも一瞬の隙をつき、財布をリュックサックから奪っている。「盗んでから50分間で奪ったカードを不正に使用して、ネックレスなど合わせて194万円相当を購入していました。とにかく手際がいいんです」(民放局記者)
無警戒な瞬間を犯罪者は狙うわけだが、その最たるものが酒だ。「繁華街で増えているのが“抱きつきスリ”と“追いはぎ”です。“抱きつき”は、酔った被害者に道端の女性が抱きついたり、腕を絡めたりして“ウチの店に来て”と誘う。女性に気を取られているうちに、数人がグルになって死角を作り、財布を奪う。酔った人間や男性の心理をよく知っています」(前出の成田主任)
「追いはぎ」は、自分の店に被害者を誘い込み、大量に酒を飲ませたり、クスリを盛ったりして、正体を失った被害者のカード類を奪い、他の店で使いまくるという手口。「徹底的にむしるので、追いはぎと呼ばれます。カードは他店で使われているので、足がつかない。主に外国人による被害が報告されています。“抱きつき”も“追いはぎ”も、酒に酔って警戒心が低下したところを狙われる。注意が必要です」(前同)
ここまで数々の例を見てきたが、実は東京都の犯罪件数は減少している。「昭和40年代の東京の犯罪認知件数は、20万件程度で、世界一安全な都市だといわれていました。それが年々増加し、平成14年にはついに30万件に達しました。そこからさまざまな対策を重ね、現在、14万8000件まで下がっています」(同)
一方、ピークだった平成14年から総件数に対する割合が変化していない、意外な多発犯罪がある。「自転車盗難です。この認知件数が、11月末までに4万3000件と、総認知件数の34.8%に達している。いざ検挙してみると、ほぼ全員が、その場だけの利用のために盗んでいます。“終電を逃したから”“酔って歩くのが面倒になったから”といった理由で盗むんですが、れっきとした窃盗。懲役10年以下もしくは50万円以下の罰金になります」(同) 酔って犯人になることのないよう、くれぐれも注意したい。
いくら注意を重ねても、しすぎることがないのが、特殊詐欺だ。警視庁犯罪抑止対策本部特殊詐欺対策担当管理官の芝山賢一警視が語る。
「2015年を見ると、特殊詐欺の件数は12月が一番多くなっています。今年の上半期は抑えられていましたが、下半期に入って被害件数が増加し、11月末には昨年と比べて81件プラスになってしまった。金額ベースではマイナスですが、被害総額は約53億円と大きい。引き続き対策が必要です」
近年クローズアップされている特殊詐欺のうち、多くの割合を占めている手口がある。「特殊詐欺で最も多いのがオレオレ詐欺で、総件数の約7割に達しています。そのオレオレ詐欺の約7割が“鞄をなくした”と電話をかけてくるんです」(前同)