電話口で息子になりすました犯人は電車の網棚、コンビニのトイレ、喫茶店などに鞄を忘れてしまったと告げ、「小切手は銀行に連絡して止めたけど、今日中に1000万円が必要なんだ。上司が800万円は都合してくれたんだけど、あと200万円足りない、用立ててほしい」と泣きついてくる。

「我々が“鞄忘れ”と呼ぶ手口で、全体の約5割と多い。そこで我々はスローガンを作りました」(同) それが、<「オレだけど、鞄忘れた」これは詐欺!>シニア世代の被害者も多い特殊詐欺。“鞄忘れた”という言い方には、くれぐれも用心したい。

 最近増えてきたのが、カードが不正使用されていると告げる電話から始まる詐欺だ。大手百貨店を名乗り、「あなたのキャッシュカードが不正に使用された形跡がある。銀行協会に電話をかけてほしい」と電話をかけてくるのだ。被害者が慌てて教えられた番号にかけると、「暗証番号を変えたほうがいい。ついては現在の番号が必要です」と巧みに聞き出される。そして「協会の者がキャッシュカードを取りに行きますので、渡してください」と告げられる。

 そして、自宅を訪れた犯人にカードを渡すとジ・エンド。暗証番号とカードをセットで握られ、口座の預金を引き出されてしまうというわけだ。犯人は、ご丁寧に首から<一般社団法人全国銀行協会不正取引監査室>なる身分証を下げ、キャッシュカードを受け取った際には、『金融商品ご解約回収証明書』という書類も被害者の手元に残していく。

「彼らは日に何百件と電話をかけているので、熟練している。だまされることはない、と思っていてもやられることがあります。過去に2度、詐欺を見破った人が3回目にひっかかったケースもありますからね」(前出の芝山管理官)

 年末年始はいろいろと出費が重なる。現金を手元に置く人も多いだろうが、オレオレ詐欺で、現金があるがゆえに払ってしまったという例もある。マイナス金利という単語を、銀行に預金があると金を払わなくてはいけなくなる、と勘違いして引き出す人もいるという。

「オレオレ詐欺被害で、手持ちのお金、いわゆるタンス預金で払ってしまったケースは、昨年11月末までに498回。今年は549回と増加している傾向が見られます。中には数千万円の現金を置いていた方もいたそうです」(前同) 現金にはリスクもある、と覚えておきたい。

「さらに注意してほしいのが、バイク便が特殊詐欺の受け渡しで利用されるケースが増えていることです。バイク便が現金を受け取りに来たら、100%詐欺だと思ってください」(同)

 一年の総決算を迎え、浮き足立つこの季節。「初詣など、年末年始は人が多くて賑やかな場所に行く機会が増えると思います。それに伴い、トラブルに巻き込まれる危険性も上がる。心して出かけてほしいですね」と、前出の藤森管理官は警戒を促す。

「まさか」という一瞬の隙を狙うのが、こうした犯罪者。そのことを忘れず、年末年始を安全に過ごしていただきたい。

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