ドアを開けると、男性は机に突っ伏していた。救急車を呼んだが、病院で急性心筋梗塞による突然死と確認されたという。

 大学時代はラガーマン。死ぬ直前も引き締まった体で、健康そのものだった。「とはいえ、先ほど上げた兆候のいずれかを感じ取っていたのでは? 健康に自信があれば、胃のムカムカや肩こりが、まさか心臓のせいとは思わず、つい、兆候を見過ごしてしまったのでしょう」(岡部氏)

 しかし、「息切れ」などは心臓疾患ゆえと分かるものの、「奥歯が痛む」のはなぜか? 医療ジャーナリストの牧潤二氏がこう言う。「胃の付近のムカムカは、心臓の痛みのせいで、そう感じるのです。胸やけと勘違いする場合もあります。肩こりも歯も、根は同じ。体を動かしたときだけ歯が痛くなるなら、心臓の“救命サイン”と疑ったほうがいいでしょう」

 一方、「夜中に悪夢で目覚める」のも突然死の兆候。心臓疾患のため、息苦しいのが遠因だという。一方、突然死の2番目の死因である脳卒中の兆候について、前出の岡田氏はこう言う。

「めまいがする、ろれつが回らない、片方の手足に力が入らない、目の前が暗くなる、言葉が出にくい……などの症状が一時的に現れ、すぐ元に戻る“一過性脳虚血発作”というものがあります。これを繰り返しているうちに、重い脳梗塞を発症することもあるのです」

 よく知られる“兆候”ではあるが、その中でも象徴的なのが「物が二重に見える」。これも、一過性脳虚血症の典型症状の一つだ。

「これは、単に目がかすむとか、見えにくいではなく、明らかに脳神経を圧迫した異常な症状と言えます。加えて、“相手の言っていることは分かるが、理解できていない”といった症状もあれば、即、脳外科など専門医に診てもらうべきでしょう」(前出の牧氏)

 加えて、「まぶたが下垂する」のも、脳卒中の危ない兆候だという。「破裂すると、脳卒中の原因にもなる脳動脈瘤(脳の動脈の一部がコブ状に拡張したもの)が、まぶたを下げるんです」(前同)

 加えて、「舌が左右どちらかに曲がる」も。「脳血栓が起きると、舌を動かす神経領域あたりの血流が少なくなったり、途絶えたりして、舌が曲がるんです」(同)

 同じ理由から、「舌の裏側が腫れる」といった兆候が出る場合もあるというから、恐ろしい。さらには、動脈硬化も要注意。進行して、心臓の血管が詰まって心停止するのが心筋梗塞。一方、脳の血管が詰まるのが脳梗塞だ。

 動脈硬化が腹に出現すると「お腹が硬い感じがする」、脚に出現すると「脚がだるい」というのも兆候だ。

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