その斡旋とは「人助け」にもほどがあろうというものだが、問題は、天下り先の団体や企業が彼らに払う給料や退職金の出どころだ。「天下り先には、見返りとして政府予算による発注や助成金がつくことになります。その金は国の金である以上、元は我々の血税。天下り官僚の給料も、形式上は民間の金でも、完全な“税金ドロボー”なんですよ」(前出の全国紙記者)
実際、今回の問題で調査委員会が公表した文書の中には、ある組織が「研究予算を増やすために適切な人材を紹介してほしい」と文科省側に要請する、露骨な記録が残っている。前出の嶋貫氏も「人助け」と言いつつ、自身が、それ以前に顧問や審議役に就いていた文科省の外郭団体から文教フォーラムの事務所費や秘書給与などを提供され、さらに文科省OBが代々受け継いできた明治安田生命の顧問職も得ていた。「明治安田生命は民間企業ですが、文科省職員が加盟する共済組合の幹事会社。つまり、文科省から莫大な税金が流れ込む立派な“お身内”です」(前同)
給与は、なんと月2回の出勤で年収1000万円。1日7時間勤務で単純計算すると時給5万9523円という、夢のような待遇。「嶋貫氏は人事など一般事務を担当する、いわゆるノンキャリアでした。本来、天下りには無縁ですから、実質、天下り斡旋という汚れ役の“お手当”ですね」(同)
そう、この金額もしょせん“お手当”にすぎない。「汚れ役をノンキャリに任せて悠々と天下りするほうのエリート官僚の退職金は、局長級で6000万円、次官級で8000万円弱が相場。2年ごとに渡りを繰り返せば、生涯に稼ぐ金額は8~10億にもなる」(同)
これは何も、文科省だけの話ではない。「07年の法改正後、一時は鳴りを潜めていた天下りですが、現在の安倍内閣の成立後に完全復活。各省庁から関連業界へと、官僚がこぞって天下っているんです」(前出の経済誌記者)
代表的なのが電力業界。かねてから経済産業省との癒着が批判されていたが、福島第一原発の事故以降、少し自粛気味ではあった。それが今、完全に“元のサヤ”に収まっているのだ。「いきなり東京電力に天下ると目立つので、電気設備の点検を行う電気保安協会など、外郭団体への天下りから始めています」(前同)