厚生労働省にも、医療費が社会問題化する中で見過ごせない天下り先がある。「PMDAという、製薬会社が新薬の認可を得たり、薬価を決める際に相談をする行政法人です。相談料が、昨年までは一律87万100円。高すぎると批判され、9万8000円~39万100円まで幅を持たせたそうですが、まったく馬鹿げています」(ジャーナリストの奥野修司氏)

「今までボッタクっていました」と認めるに等しい大幅値下げだが、常態化しすぎて、そんな意識もなかったのだろうか。

「悪しきを挫く」存在であるはずの警察官僚も、タクシー業界の団体である全国タクシー・ハイヤー連盟の理事職を常に“乗り継ぎ”。警備会社や土地建物関連など、コワモテなところには必ず天下っているという。

 さらに、我が国の安全保障を担う防衛省も同じだ。「13~14年度は、三菱重工、三菱電機、川崎重工など年間1000億円以上を受注する会社に、防衛官僚が10人単位で天下っています。防衛機密を言い訳に、これらの会社にだけ発注をするという分かりやすい構図。他にも富士通、東芝、小松製作所などが“ファミリー”ですね」(防衛省関係者)

 これ以外にも各省庁が公開している「再就職事例」は、枚挙にいとまがない。「上級官僚ほど、三井、三菱など旧財閥系の企業や、古いつきあいの大企業への天下りが目立ちます。どこであろうと、見返りに国から金や認可をガッポリ取ってくるという構図は一緒ですね」(経済誌記者)

 すべてが文科省のような違法事例でもないが、それでも天下りは天下り。民間では中高年がリストラされてゆく時代に、あまりに浮世離れした話ではないか。「能力やスキルを乞われての再就職なら分かりますが、机に座って40年過ごしただけの役人が、なんの努力もなく利権の流れに乗って稼ぎ、罰則もないようでは、国民は納得しませんよ。きちんと本人に責任を取らせるシステムにしないと、同じことが繰り返されるでしょう」(前出の奥野氏)

 東京五輪を控えてイケイケの安倍首相、当面は天下り規制のことなど興味はなさそうだが……。「そもそも、その東京五輪も、天下り利権の温床になっていますからね。森喜朗会長が率いる大会組織委員会は東京・虎ノ門に事務所を構えていますが、この街は、特殊法人や官庁の外郭団体が集まる“天下りの総本山”。ここで何がやり取りされているのか、巨額に膨らんだままの会場整備費などを見れば、想像もつこうというものです」(全国紙記者)

 モラルも忘れて税金に群がるハイエナ官僚たちに我々の怒りの声が届く気配は、今のところ、ない。

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