中心となったのは、やはりイチロー。「王監督に直々に電話して、代表入りを伝えたイチローは、練習中は常に全力疾走で、それを見た他の選手たちが“イチローさんがやっているから、俺たちもやらなきゃいけない”と、チームがまとまったんです」(スポーツ紙記者)

 3月3日に始まった本大会。1次リーグでは中国、台湾に勝ったものの、韓国に敗れて2位で2次リーグへ。しかし、2次リーグには落とし穴が待っていた。主軸の福留孝介の不調もあり、メキシコには勝ったが、あのボブ・デービッドソン審判の「世紀の誤審」もあって、アメリカと韓国に敗れて1勝2敗。誰もが「準決勝への進出は絶望」と感じた。

 しかし、一人だけ希望を失わない男がいた。王貞治監督その人だ。「正直、俺たち選手は“もうムリやろ”と思ってました。だけど、王さんだけは、“少しでも可能性がある限り準備をしておくべきだ”と力説して、ビデオを見て研究していました。驚きましたよ」(里崎氏)

 そして、なんと2次リーグのアメリカ対メキシコ戦でメキシコが勝利。1勝2敗で並んだ3チームの中で「失点率」の少なかった日本が準決勝に進んだ。

 準決勝の相手は、この大会で3度目の対決となる韓国だ。「大会前の記者会見で、イチローが“(アジアでは)向こう30年は日本には勝てないような勝ち方をしたい”と発言したことにカッとなって、韓国チームは日本戦となると目の色を変えてきていたんです」(前出のスポーツ紙デスク)

 とはいえ、3回も続けて同じ国には負けられない。準決勝では不調のため、スタメンを外されていた福留が、7回0-0で、1死二塁の場面で代打で登場。そこで、値千金の2ラン本塁打を放って日本中を歓喜させた。「その後、上原が韓国打線をシャットアウト。日本代表の思いが込もった好試合で、我々選手にとっても、あの大会で一番うれしかった瞬間でした」(里崎氏)

 日本は、その勢いのまま決勝戦でキューバを撃破。土壇場から世界一に上り詰めた。

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