さらに、竹島問題でも朴政権以上に強気な態度に出ることが想定されるほか、韓国事情に詳しい外交評論家の井野誠一氏は、次のような悪夢を予見する。「そもそも文氏は、慰安婦について、人類的人権侵害問題だという認識を持っています。世界的にその考えを広めていくには、韓国国内のみならず、慰安婦像などのモニュメントを世界中に建ててしかるべきという持論の持ち主なんです」

 さらに、あろうことか、「韓国の歴代政権が犯した反民族的な過ちが、日韓基本条約の締結にあるという考えも持っています」(前同)

 1965年に、総額8億ドルの援助資金と引き換えに、韓国側は日本への賠償金請求を放棄し、両国は国交を樹立。その際に締結したのが日韓基本条約だ。文大統領は、その際の援助資金を基に韓国が「漢江の奇跡」と呼ばれる経済成長を成し遂げたことを徹底無視する構えである。

 強引に日韓関係を50年以上前に戻そうとする人物だけに、北朝鮮や米国との関係も推して知るべし。「文氏は選挙中も“アメリカより、まず北朝鮮を訪問する”と公言。就任の宣誓後、即座に“条件が整えば平壌を訪問する”と表明しました」(外信部記者)

 また、昨年2月に韓国政府が北朝鮮への独自制裁として操業を停止した、開城工業団地の操業再開も目論んでいるという。『韓国左派の陰謀と北朝鮮の擾乱』を上梓した、元韓国国防省北朝鮮分析官で拓コヨン殖大学客員研究員の高永チョル喆氏は、こう続ける。

「親北路線の文氏の方針は、南北の和解を進めることで、北朝鮮の挑発行為を封じるというもの。北朝鮮が“核・長距離弾道ミサイル開発をやめる”という条件のもと、操業再開に踏みきる可能性が高いです」

 だが、暴走を続ける金正恩委員長が約束を守るとは考え難い。「約束が守られなければ、核・ミサイル開発の財源となり、北朝鮮の軍事力強化につながるばかりか、有事の際は、開城工業団地にいる韓国人が人質となる恐れもあります」(前同)

 このほか、「北朝鮮の景勝地・金剛山への観光事業の再開や、来年開催される平昌冬季五輪の競技会場の一部を北朝鮮にすることなども、検討されるでしょう」(前出の井野氏)

 これでは、トランプ米大統領が目下進める北朝鮮包囲網に綻びが生じる。だからこそ、米国は選挙前から韓国に左派政権が誕生することを極度に恐れていた。

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