さて、ここで、それぞれの地域にも注目してみよう。塩分の摂り過ぎは、胃がんの原因とされるが、「特に寒さの厳しい日本海側の東北・北陸地方は、食べ物を塩蔵する文化がありました。いまだに、その塩気の多い物をとる食文化が残っていることも大きな要因でしょう」(前同)

 では、同じ日本海側とはいえ、東北・北陸からかなり離れた鳥取県が、がん全体でワースト3入りしているのは、なぜなのか。「これに関しては、拠点病院の少なさもありますが、同県の飲酒率の高さも考えられますね」(前出の健康雑誌記者)

 厚労省のデータによれば、都道府県別で飲酒習慣者の割合が最も高いのは、青森県(52%)。次いで、鳥取県(49%)が堂々2位なのだ。いくら「百薬の長」でも、飲む量はほどほどにしておいたほうがよさそうだ。

 さらに、西のほうに目を向けてみよう。九州の7県は、全体ではどこもワースト圏内に入ってないどころか、むしろ良い位置につけているところも少なくないのに、なぜか肝臓がんに関しては、佐賀県が3位、福岡県が5位、宮崎県が6位に入っている。

 予防医療学を専門とする、新潟大学名誉教授の岡田正彦医学博士に分析してもらったところ、「がんの発生は、食生活や運動、患者それぞれの個別事情、遺伝などの、さまざまな条件が幾重にも重なっているわけで、一要因で語れるほど単純なものではありませんが……」と前置きした後で、“風土病”の可能性を指摘してくれた。

「かつて、ウイルス性の白血病が沖縄県、鹿児島県、宮崎県などに偏在していたことがあり、風土病とも言われていました。肝臓がんの原因も、約9割はB型、C型肝炎ウイルスですから、その可能性もないとは言えません」

 さらに東北地方については、「個々人の生活習慣や、他の要素もありますが、近年、遺伝子研究が進んだ結果、東北地方のがん死亡率が総じて高いのは、その地方で代々受け継がれてきたDNAが関係している可能性も考えられます」と示唆する。とはいえ、「これからの時代は、人々の交流が活発になり、同じ地域の人以外と交わる機会が増えるでしょうから、都道府県別の格差は次第に少なくなるでしょう」(岡田博士)

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