「そもそも、パレルモ条約はテロ対策とは無関係です。この条約はマフィアの資金洗浄など国際的な経済犯罪の取締りが目的で、日本政府もこれを認めています。安倍政権だけが“テロ対策に必要な条約で、共謀罪がなければ批准できない”と嘘に嘘を重ねているんです」

 政治ジャーナリストの角谷浩一氏も、この共謀罪の内容の曖昧さを指摘する。「政府は共謀罪の一般国民への適用はないと言いますが、どういう基準で一般人とテロリストを判別するのかは不明。この法律が成立して2~3年もすれば、一般国民に適用される可能性は、いくらでもあります」

 実際、この法案を“戦時中、思想犯などの弾圧に使われた治安維持法の再来だ”とする批判もある。そうした懸念に対する説明責任を果たさず採決したことで、国民に大きな不信感を抱かせてしまった。

「採決前の世論調査では、77%の人が“説明不足”と答えていました。これを無視してしまったわけですから、代償は大きいですね。さらに、あろうことか、強行採決が行われた23日は、港区の東京プリンスホテルで首相の出身母体である自民党清和会(細田派)の政治資金パーティが予定されていました。金集めに間に合わせるため議論不十分のまま採決したのだとしたら、国民をナメすぎですよ」(民放局記者)

 加計学園、森友学園、共謀罪と、説明不足を棚に上げて拙速に突き進む安倍政権に、自民党内からさえ「官邸は思い上がっている」との声が出始めているという。ここ最近おとなしかった石破茂元地方創生大臣が、自派閥のパーティで「未来永劫続く政権は絶対にない」と、総裁選出馬の狼煙を再び挙げたのを皮切りに、野田毅氏、村上誠一郎氏といったベテランも、税制問題の勉強会という名目で会合を待ち始めている。

「5月3日、安倍さんが読売新聞のインタビューと、改憲を目指す団体の会合に寄せたビデオメッセージで、これまでの経緯を無視して“改正憲法は東京五輪開催20年施行を目指す”などと個人的に言及したことが象徴的ですが、権力を頼みに個人的な好みや思いを実現し、プロセスなどすっ飛ばせばいいという考え方は、さすがに党内でも敵を作っています」(前出の角谷氏)

 そして、もう一つ、安倍首相は大きな地雷を踏んでしまった。

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